入間市博物館ALITの「お茶の博物館」にて狭山茶について学ぶ

茶にまつわる旅

先日、入間市博物館ALITへ行ってきました。(2019/8)

ALITお茶大学】では「お茶」と「地域」をテーマに年間を通して様々な講座を行っており、生産地全体で「地元のお茶」を盛り上げています。
お茶好きな人はたまらない講座などもありますので、筆者も今後要チェックです。

▼場所はこちら

博物館ですので、小さなお子様も楽しめるような展示(こども科学室等)もあるのですが、いそいそと「お茶の博物館」へ。(とはいえ、一通り見ました。うっかり童心に帰りました。)

狭山茶の特徴



「色は静岡 香りは宇治よ 味は狭山でとどめさす」

なんとなーく、どこかーで聞いたことのあるこのフレーズ。

また、「狭山火入れ」という、いわゆる「火香」が強いのが狭山茶の特徴であると聞いたことがある方も多いかも知れません。

「狭山火入れ」について著名な生産家の方に伺ったところ、「昔はすべて焙炉の上で手で茶を作っており、当然乾燥機などはない。そのため、焙炉でしっかりと乾燥させることで自然と火香がついたものだと考えられる。」とのことでした。

強火で茶を焙じた場合ほうじ茶になりますが、「火香」はあのほうじ茶の香りの弱いものだと考えていただくと分かりやすいかと思います。
※香りの成分的に強弱があるだけなのかどうかはわからないですが…

一般の煎茶より少し高温で火入れ(焙炉乾燥)をすることにより、茶葉は若干白くなり、水色も少し黄金色になるようです。

また、狭山は茶の生産地としては少し寒い場所のため、葉が肉厚になり、蒸し時間を長くしなければ静岡や宇治のような形状に揉めなかったのかも知れません。
そのためか、形よりも味を重視して作られてきたという歴史があるとのことです。

狭山茶にはこっくりと甘味があり、味わい深い印象を筆者も受けます。

狭山茶の歴史

狭山茶ができるまで

「狭山茶」の多くはこの博物館のある入間市で生産されています。
しかしながら具体的にいつ頃から茶の生産が始まったのかは歴史上はっきりとしていません。

南北朝時代(1337-1392)の「異性庭訓往来」(往復の手紙形式で、寺子屋等で使われた初級の教科書)には、【武蔵川越(むさしのかわごえ)】と【武蔵ノ慈光茶(むさしのじこうちゃ)】という名が有名な茶生産地として登場します。

【武蔵川越(むさしのかわごえ)】は川越市小仙波町にあった「無量寿寺(むりょうじゅじ)」が発祥の地とされ、比叡山延暦寺から伝わったと言われているそうです。

一方、【武蔵ノ慈光茶(むさしのじこうちゃ)】はときがわ町にある天台宗の古刹「慈光寺(じこうじ)」が発祥の地とされています。
※栄西の弟子の栄朝が鎌倉時代の慈光寺の住職だったため、抹茶の製法が伝来したのではないかと言われているそうです。

しかし、どちらも関東の天台宗の大寺院であったため、戦国時代には後北条氏(小田原北条氏)によって焼き討ちされてしまいます。

茶を生産していた有力寺院が無くなったことにより、「川越茶」と「慈光茶」のブランドもここで消えていくこととなります。

しばらく狭山茶は途絶えますが、江戸時代後期に宇治の蒸し製煎茶の高まりから、狭山も蒸し製煎茶の製法を習得した者たちにより、狭山茶が復興します。

幕末には横浜が開港し、狭山茶も横浜からアメリカ(北米)へと輸出されます。
有力な茶業者により、「狭山会社」が作られ、アメリカへの直輸出等も行っていったようです。

茶業組合や茶業伝習所があちこちに作られ、その後は機械製茶も始まり、昭和3年には埼玉県の茶業研究所も開設されます。

第二次世界大戦中からしばらくは再度荒廃してしまいますが、割と早くに復興を遂げ、昭和30年~40年代には大きく生産量を伸ばしていきました。
埼玉県HPより引用
埼玉県公式HPより引用

結び

筆者は狭山茶はもっと大きな生産地だと思っていました。
統計を見ると、栽培面積も生産量も思ったよりは多くないんですよねー。

単純に狭山茶にゆかりのある知り合いが多いのか、著名な生産者の方のネームバリューなのか…。

狭山茶は「自園・自製・自販」が主流だそうです。
例えば静岡や鹿児島等の大きな産地では茶の生産、加工、流通が分散化されており、消費者の手に渡るまでは時間も労力もかかります。(中間マージンも発生)
▼参照記事:兼業茶農家とは?実際兼業茶農家ってどういう感じで茶と関わっているの?

つまり、小さな生産者でも自ら茶を作り、販売することで高い利益を得ることが出来ます。(出来る可能性がある)
これは狭山茶の大きな特徴であると考えられます。

また、埼玉県全体で狭山茶を押している空気はひしひしと感じますし、ALITお茶大学のニュースも全国版で見たような気がします。(うろ覚え…)

昔縁あって入間市に数年間通っていた筆者としては、狭山茶の増々の飛躍を楽しみにしています。

それほど大きな茶の展示ではないですが、トップ画像のような「製茶仕入帳」という素晴らしい展示があったり(中は見られないので残念…)、昔の焙炉が展示されており、茶室があったり、かなり楽しめました。↓

狭山焙炉

また、受付でお願いすれば、茶に詳しい方が解説をしてくださるサービスもあるそうですので、是非ご利用ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました