先日「NPO法人 現代喫茶人の会 主催・シンポジウム<第15回もてなし講座>」の「21世紀の紅茶を考える」という講演会に参加してきました。
講師はティーブレンダーとして名高い熊崎俊太郎先生。
一昔前は「紅茶王子」と言われ、今も紅茶業界で光り輝く存在。
ご自身で「元祖」と仰っていましたが。(今は他にも紅茶王子がいらっしゃいます。)
彼のお作りになった紅茶はどれも美味しく筆者はただのファンです。
熊崎先生の紅茶はフィーユ・ブルーで購入できます。
今回の講演についてまとめていきます。
「21世紀の紅茶を考える」について
今回の場所は大妻女子大学。
大学の講堂に入るなんて、かれこれ…何年振りでしょうか。
自分に娘がいたら授業参観のような気分です。
主催は「NPO法人 現代喫茶人の会」。
非常に興味深い会を常に行っており、筆者もちょくちょく参加させていただいています。
1回のセミナーが一般で2000円程度ですので、お茶に興味ある方は是非チェックしてください。
※丁度コロナウィルスが問題となっており、こちらの講演会の少し後には国からイベントの開催を中止や延期するように勧告が出ました。
イベント主催者の方たちもかなり注意を行っていて、マスクの着用やアルコール、手洗いを勧めており本来ティータイムで食べる予定だったお菓子も持ち帰りということになりました。残念…。
とはいえ、何名でしょうか、60名70名ほどの人数が集まっていたように思います。
熊崎俊太郎先生登壇。
王子のお顔はモザイク越しにご想像ください。
ティーブレンダーについてはこちらの記事も参照いただければ幸いです。
短期大学でも教鞭をとっているということで、実際の若い方たちの紅茶の捉え方なども所々で出てきます。
「21世紀の紅茶を考える」講演会メモ
まず紙コップで3種類の紅茶が配られ、少しずつ味を感じながら試飲。
①キームン紅茶=19世紀的紅茶
キームン紅茶を飲んだことがない方向けにお勧めを。
こちらのブレンドされているキームンは非常に飲みやすく、イギリス伝統のメーカーですので味も抜群に美味しいです。
今回いただいたのは熊崎先生のオリジナルブレンドだそうなので、もう二度と飲めません…。
もしかしたら近しいものはフィーユ・ブルーで購入できるのでは…。
②アールグレイ(クラシック)=20世紀的紅茶
⇒どっしりとした味わいにベルガモットの香りが柔らかく香るアールグレイ。
⇒現在消えゆくビジネスモデルであるもの。
伝統的なキームン紅茶にセイロンをプラスし、ベルガモットの香り付けをしたもので深みがあり美味しくいただけます。
③アールグレイ(モダン)=21世紀的紅茶
⇒このアールグレイはキームンの味わいは感じず、軽やかな味と香り。
⇒RTDで使われているような紅茶
①~③は今のビジネスモデルにも繋がる。
■「紅茶」という言葉が想起させるもの。
「紅茶」と「ティー」を分けた方が良いのではないか。
▼茶系清涼飲料=ティー
▼ティーポットとティーカップで飲むクラシカルなもの=紅茶
「紅茶」という言葉から想像するものが若い人たちと他の年代で相違がある。
昭和50年代の茶特集の雑誌の表紙にあるのはティーポットとティーカップ。
しかし、今の雑誌のお茶特集ではペットボトルやテイクアウトカップが表紙。
「紅茶」と「ティー」は分けて共存していくべき。
紅茶を知らない若い学生がなぜか紅茶の産地を知っているのはRTD(ready to drink)に「ヌワラエリア」産や「ウバ」産などと書かれているから。
(例えばRTDのキリン午後の紅茶にはスリランカの産地が明記されています)
戦前はお茶文化だったのに、戦後(アメリカの占領下におかれたためか?)スピード社会において、珈琲がメインになった。
■紅茶を日常のドリンクにしようとする努力が足りなかったのではないか。
■きちんと美味しく飲めるように、淹れ方等の啓蒙活動が足りなかったのではないか。
■日常毎日美味しい紅茶を飲みましょう、と言いつつ、イギリス貴族のアフタヌーンティ等を学ぶ紅茶教室の方が受けが良い。
⇒非日常を演出しないと客が集まらなかった?
紅茶はスロードリンク。
ファストサービスが可能な珈琲に勝てなかった。
そんな時代の中でRTDが流行るようになる。
それが売れ始めて、お金が動き出すと、メーカーはこちらに力を入れることになる。
企業努力により商品開発やパッケージデザイン、世界のお茶のコンセプト、世界の食文化に合うような味のものを開発。
RTD紅茶はあえてぐいぐい飲めないように甘く作っている。
そのため、ある意味スロードリンクになった。
清涼飲料は喉を潤すためのものだが、紅茶飲料は少しずつしか飲めないものにしている。
メーカーの努力によりRTDが売れ、「ファストドリンクが可能なスロードリンク」がRTDによって生み出される。
そして、若い人から見ればそれが本物になる。
非常に素晴らしいことである半面、厄介な問題も抱えることになる。
「(熊崎先生)自身がイギリスの喫茶文化に憧れ、それを日本にも広めたいと起業したのが1986年。奇しくもペットボトル飲料が発売された年。
古き良き紅茶文化の呼び水としてペットボトル飲料の普及を望んでいたが、20世紀末から事態は大変な方向へ…。」
■20世紀的紅茶について考える
世界中で水の次に紅茶が飲まれている。
食材との相性が良いので。(油脂分を流す)
フルーツとの相性も良い。
食事が記憶に残るようになる。
20世紀の紅茶文化はバリエーションティの幅が広がる。
料理の世界も複雑になってきて、味覚の分析も進んできた。
ティーモクテル、ティーカクテル、ティーラテ、デザートティなど。
▼参照記事:ローソンのMACHIcaféのフルーツインティがようやく飲めた!再販後
▼参照記事:自宅で作れる簡単アイスフルーツティ!目指せ!フルーツインティ!
▼参照記事:話題のチーズティってなに?どうやって作るの?
紅茶葉の種類は少なく、紅茶をポットで飲むだけでは消費量は増えない。
紅茶葉は料理食材の一つとして進んでいくことになる。
ある意味、多数あるハーブの一種であった茶に戻ったのかも?
■21世紀の紅茶を考える
情報通信技術(ICT)とグローバル化が起こっている。
紅茶ビジネスの現場も変化が多く、メーカーなども困惑している
▼味覚の幼児化⇒ぬるい、甘い、濃い、柔らかいが最高
▼感性のデジタル化⇒すっきりと整理されたものが好まれる
野菜も掘りたて野菜とカット野菜、大学の若い方たちはカット野菜の方が好む。
カット野菜の方が味がクリアだと言う。
天然素材の味をノイズと判断する。
それを立証づけるために、ペットボトル世代の方はお茶風に化学合成をした飲み物の方を好むというような実験も熊崎先生はされているとのこと。
▼経験の価値の低下⇒その土地でそこで感じながら飲むよりも日本で偽物を飲んでも一緒
▼コスト増大
これらが複合的に起こっている。
時代の変化に合わせて、企業も個人も変革が必要な局面を迎えている。
■3種類の紅茶からビジネスモデルを考えていく
①19世紀的紅茶=シングルオリジン
大儲けはできないが、就業満足度が高く、人間的なビジネス。
個人のこだわりのオーナーがやっている店、のようなもの。
20世紀末には滅びかけたがICT化によって、ブログやインターネット販売などで盛り返しているビジネスモデル。
産地直送の野菜、自身らが作ったお茶を飲むなど。
店や産地に行かないとわからないもの。
デメリットとしては、埋没しやすいこと。
身内で行っているところが多いため、身内に何かが起こった際に問題が生じ廃業に追い込まれるようなこと。
産地や地域とつながっていくことで発展していくのではないか。
②20世紀的紅茶=小売り、喫茶
絶望的な状態。。
ブレンド技術が日本一等、誇れる技術などがあれば生き残ることが出来る。
紅茶専門店等は厳しい状況。
考え方を変えて、新たな道を切り開いていくことが必要ではないか。
③21世紀的紅茶=RTD
RTDが基本となった経済モデル。
資本を元に茶の普及、喫茶文化の保全、啓蒙活動、研究を行っていっていただきたいところ。
デメリットとしては、生き残るための多様性が奪われる可能性がある。
また、旧来の喫茶文化にとどめを刺す可能性もある。
紅茶、という言葉で想像するものは時代によって変わる。
古き良き紅茶文化は廃れているがどうしたらよいか。
若い人達を取り込むしかない。
様々なものがバーチャルで経験できる時代であるからこそ、本物を理解してもらえるためにどう努力するか。
フィーユ・ブルーでは、紅茶をブレンドし、フレーバードティとし、個包装にしている。
まずは飲んでもらわないと意味がない。
紅茶のブレンドに教材という側面を持たせている。
結び
講演会のあと、熊崎先生の紅茶を飲みながら交流する場があり、その後さらに紅茶界でご活躍の方たちのお話を伺う時間がありました。
お土産にもいただいたフィーユ・ブルーの「パルフェタムール」は相変わらず美味しい…!!!
「エチュード」も大好きです!!!
どれもこれも非常に学びとなったのですが、こちらは筆者の胸に秘めておこうと思います。←
この場にいらしていた紅茶界の重鎮の方々には及びもしませんが、筆者も細々と紅茶教室を行ったり、熊崎先生が絶望的(笑)と称していた「お茶カフェ」を営んでおりましたので、お話がとても身に沁みると同時に大きく頷くことが多数ありました。
筆者の行う紅茶教室は、シングルオリジンとブレンドの考え方やいくつかのお茶を同時にテイスティングするというような形で、紅茶の基本を学べるようにしています。(淹れ方なども含め)
▼関連記事:茶の鑑定(テイスティング)をする際の道具について
そして、最終目標は「家で気軽に紅茶を淹れられるようになる」ということです。
しかしながら、「アフタヌーンティセットを楽しむ紅茶教室」や「スコーンとクロテッドクリームについて学ぶ紅茶教室」というような内容の方が確実に集客が出来ました。(一応どれも試してみた)
アフタヌーンティセットを楽しむ紅茶教室をディスっているのではなく、「家で気軽に紅茶を淹れる」啓蒙も同時に行っていかなければ、紅茶文化、喫茶文化は廃れていってしまうのではないかと思います。
いつか19世紀に戻って、「紅茶は貴族(金持ち)が飲むもの」ということになりかねないのではないかと危惧しています。
20世紀的紅茶から入った筆者としては、「20世紀的紅茶」の華麗なる復活を望むばかりです。
RTDも筆者は肯定派です。
自身も飲みます。
熊崎先生が仰っていたように「紅茶」と「ティー」の住み分けが今後非常に大事になっていくのではないかと思っています。
RTD育ちの若者たちと共存し、20世紀的紅茶と融合していく21世紀的紅茶。
新しい未来の紅茶はどうなっていくのでしょうか。
楽しみでありつつも、革新していかなければと襟を正しました。
非常に素晴らしい会に参加できたことをありがたく思っています。
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