世界お茶まつり2019!<セミナー編④>「茶の品種から考える<これまでとこれからの日本茶>」

今回の世界お茶まつりで筆者が参加したセミナーはこれが最後となります。
品種茶専門店心向樹の川口さんのセミナーです。

「茶の品種から考える<これまでとこれからの日本茶>」とはなんとも心惹かれるタイトルです。

数年前から品種に興味を持ち始めたものの、あまり詳しくないため心向樹さんのセミナーを今回とても楽しみにしていました。




品種茶専門店心向樹とは?

心向樹さんはお茶好きな方ならご存知かと思いますが、茶の品種をメインに扱っています。
例えば緑茶なら「やぶきた」と「さえみどり」と「おくみどり」等を販売しており、品種による違いを楽しむことが出来ます。

ありがたいのは一煎パックでも販売しているところです。
家で飲み比べが出来ます。

今まで品種ごとの飲み比べをする際、単一品種の茶を販売しているお店で購入していましたが、どうしても店によってクオリティが異なるため、品種の違いを感じるまでには至らないことが多々ありました。
そういった意味で一煎パック、ありがたいです。

さらに、茶の苗も販売していますので、お茶好きさんにはたまらないです。
一般の方が好みの品種の苗を手に入れるのはなかなか難しいことだったのです。
筆者もこちらで苗を数品種購入しました。(写真はいずみ)

埼玉にカフェもあるので、是非ご興味ある方は行ってみてください。
お茶のイベントにもよく出店されていますよ。

今年中に心向樹さんにお会いできるイベントは以下だそうです。

国産紅茶フェスティバル@愛知県尾張旭市 11/24

地紅茶サミット@愛知県豊橋市 12/8-9

どちらも愛知県でした…。

 

品種から考える“これまで”と“これから”

この「茶ート」は以前から見たことがあり、非常に素晴らしいと思っていました。
日本茶を鑑定する際に香りや味をみますが、正直ピンとこないことが多かったのです。。
こちらを見ながら茶を飲むと「そういえばサンルージュって渋みはあるけど香りはしないなぁ」というような自分の中での指針ができます。

さらに、「茶付箋」も非常に便利。

自分が飲んだ時の印象を書き込んでチャートにします。
この作業により、品種の特徴が自分なりに整理できるというもの。

静岡でお茶のツアーを行っている「そふと研究室」で主に製造しているそうで、心向樹にて監修をしているとのこと。

話がそれますが…。
そふと研究室はお茶に興味がある方におススメのツアーを多数行っています。
筆者も数回参加させていただいていますが、なかなか車がないと行けない場所にも案内してくれて、生産者の話を聞いたり、畑を見せてもらったり、作った茶を飲ませてもらったりできます。

他にも茶市場見学だったり、茶町歩きだったり、全く茶関係でない人も気軽に静岡の茶を満喫できます。
「茶処静岡に行ってみたいけど…」とためらっている方にはかなりおススメです。
※ちなみに茶マニアの人も楽しめる工夫がされており、非常に良いです。
※さらに、茶には関係ない富士山トレッキングツアーなども行っていますので、本当に静岡全部が満喫できます。




今回のセミナーで10種類の鑑定をさせていただきました。
茶付箋に自分の印象を書き込みつつ…。

最初に座学として、今回の10種類の品種の説明がありました。
品種の勉強をする際に必須の「新版 茶の品種」を参照しながら話は進みます。
こちらの本は品種の細かい情報が入っています。親は何か、茶農林〇号、何年に登録等
※こちらは公益社団法人静岡県茶業会議所で購入が出来ます。
もちろん、心向樹さんでも購入可能です。

<やぶきた>は母親(めしべ側)が静岡県在来種。
父親(花粉側)は不明です。

<やぶきた>は杉山彦三郎氏(日本茶界では有名人)が育成した現在日本茶のおよそ8割がこの品種だと言われているスター品種です。

「静岡県在来種」にどこからか飛んできた花粉がついて、種ができ、その種を撒き、その中から優良と思われる苗を繁殖させたもの。

<あさつゆ>は母親が京都(宇治)在来種。
父親は不明です。

天然玉露と言われる旨味が強い品種です。

<やぶきた><あさつゆ>を人為的に掛け合わせたものが<さえみどり>
<やぶきた><あさつゆ>の良いところを取り、旨味が多くて美味しく作れる品種が生まれます。

この<やぶきた><あさつゆ>が茶の第一世代。
第一世代の子供<さえみどり>が第二世代。

第一世代は在来種の中から優良なものを選抜したものです。
第二世代はその第一世代よりもっと美味しいもの、収量が取れるもの、やぶきたと収穫時期が被らないもの(早生か晩生)を目指して人為的に交配して作られたものとなります。

そして今は第三世代へ。

<きらり31>は母親が<さきみどり(第二世代)>
父親は<さえみどり>

<はると34>は両親が逆で、母親が<さえみどり>で、父親が<さきみどり>となります。

また、<やぶきた>が母親で父親が不明な<さやまかおり>
そこから母親が<さやまかおり>で、父親はやぶきたの血を引く<枕崎13号>を掛け合わせて生まれた<なんめい>は、病害虫にとても強い品種です。
※枕崎○○号というような名前は品種登録される前(されていない)の系統名だそうです。

病害虫に強いということは農薬を使う必要が無くなります。
無農薬でも美味しいお茶が作れれば、増加傾向の欧米諸国への日本茶の輸出はより増えていくはずです。
なにせ、欧米諸国は農薬基準が非常に厳しい。。。

第三世代は今の時代に合った品種を作っています。
他にも耐寒性が非常に強い<おくはるか>やアントシアニンが豊富ということで機能性に優れる<サンルージュ>等が生まれています。

▼参照:茶を飲むのは体に良いから?茶=薬?

両親の特徴が分かった状態で鑑定を行うと、子供の特性がよくわかるようになるそうです。
とはいえ、10種類を鑑定すると小さな違いは分かるのですが、品種香等まではさっぱり分かりませんでした…。




日本茶のこれから?

第三世代の品種として、「輸出できるもの、機能性があるもの、環境に耐えうるもの、(香りの良いもの)」が様々出てきているそうです。

そして、今日本茶のおおよそは<やぶきた>で成り立っていますが、あと20年ほど経てば<やぶきた>以外の品種がコンテストの上位を占めるのではないかというお話でした。(例えばきらり31)

現在の状況を考えると第三世代というのは多様性に富んでいますが、今後第四世代になってくると果たしてどんな特徴を持つ品種が生まれるのでしょうか。

筆者が苦肉の策で考えたのは、例えば宇宙で育つ品種(空気がいらないとか)やより機能性に特化して病気を治す品種とか。

機能性表示食品のペットボトルのように、「この品種の煎茶を飲み続ければ風邪が治る」というようなもの。
今はべにふうき煎茶は「メチル化カテキンが豊富で花粉症に効く」と言われています。
こんな感じ。


そういった効能に重視したほとんど薬と同じ扱いとなる品種なんかが生まれたりしませんかね…?
素人考えすぎますので、まぁその辺りは研究者の方にお任せして…。

結び

他にも品種茶トリビアなど様々お話をいただき、非常に勉強になりました。

頭を整理させて、改めて品種茶を鑑定していきたいと思っています。
実は心向樹さんの一煎パックが家に山のようにあります。笑

改めて「新版 茶の品種」を読み返し、品種茶を飲んでみて知識を蓄えながら、頭を整理していきたいと思っています。

今回の筆者が受講した日本茶のセミナーはすべて「未来」に向けたもので、非常に良かったと思います。
過去を振り返るだけではなく、未来へ向けて今後日本茶の世界はどうなっていくのか。
自身も未来を見据えて、考えながら学びを深めていきたいと思います。

台茶24号誕生!台湾生まれ台湾育ちの新品種?!




中華民国(台湾)の行政院に属している、行政農業委員会(日本の農林水産省にあたる)茶業改良所が2019/8/6に新品種台茶24号が発見されたというニュースをアップしています。
日本の茶業試験場、茶業研究所と同じイメージですが違っていたらどなたか教えてください。

台湾の茶業界では「タイワンマス(中華民国指定国宝魚)」ほど希少な在来種が発見され、19年間育種をしてきたものだそうです。
原木は氷河期時代にあったものだとのこと。

マッシュルーム、アーモンド、珈琲のような独特な香りを有しているそうです。

台茶24号って何?

台湾の茶の品種には通し番号がついています。
台茶1号、2号、3号…今回の台茶24号。

筆者が個人的に馴染み深いのは「台茶18号」です。
通称、「紅玉」と言われる、紅茶用品種です。
※りんごではありません

初めて≪台湾の紅茶≫と聞いて飲んだのがこの「紅玉」で、スリランカのウバのようなサリチル酸メチル(スーッとした薄荷のような香り)を感じ、強く印象に残っていました。

紅茶を例に出したので、日本の紅茶品種で見てみますと「べにふうき」という品種があります。

「べにふうき」は<べにほまれ>と<枕cd86>を親に持ち、鹿児島県枕崎の茶業試験場で
育てられました。
1993年には≪茶農林44号≫として品種登録がされています。
ちなみに、農林水産省の品種登録ホームページにていつ登録されたのか等が検索できます。



そもそも育種って何?

そうそう、そもそも育種って何?という方もいらっしゃるかと思います。
筆者もよくわかっていませんでした。(今も細かいところは分かりません。やったことないから)

かなり前に試験場に話を伺いに行った際、お話を伺ったことがあります。

“チャノキ”(学名カメリア・シネンシス)は自家受粉しません。(他花受粉)
つまり、花が咲いて、自分のおしべとめしべで受粉しないのです。

そのため、茶業試験場で茶の花が咲くと、育種したい品種の花粉を取り、違う品種に受粉させます。
そして、他の花粉が混じらないように花に袋を被せ、実が成るのを待つそうです。

結実しないこともあり、結実したものを土に植えても発芽しないものもあり…。
さらに、発芽して数年経っても枯れたり、うまく育って新芽を取って茶を作っても病害虫に弱く品種として登録できなかったり…。

さらに言うと、ある程度病害虫に強いとか耐寒性があるとか、新品種として特徴があるものは、農家さんに里子に出され、実際その土地でどのように育つのかを調べます。

よって、たった一つの品種が生まれるのにも十数年かかるということでした。
話を伺っているだけでも途方に暮れました…。
研究員一人が一つの品種を生み出すだけでも奇跡に近いんじゃ…?

品種って簡単に言うけど、ものすごいたくさんの方のたくさんの貴重な時間が費やされて生まれているのだと思うと堪らなく愛おしく思えます。

と。
ちょっと余談が過ぎました。。

今回の台茶24号は原木が氷河期のもの、とのことですので種が見つかったのでしょうかね?
それを茶業改良所で大切に大切に育てて、挿し木で増やして…とやったのではないかと勝手に推察します。(違ったらごめんなさい)

【追記】
中央通訊社の記事に記載がありました。
氷河期の遺存種で、「台茶」シリーズの中で初めての在来種の山茶となるそうです。(2019/8/8)

結び

台茶24号の≪マッシュルーム、アーモンド、珈琲≫の香りが、緑茶、烏龍茶、紅茶と作り分けた時にどのような変化を見せるのか、味はどうなのか、非常に気になります。

台茶23号もデビューしたばかり。
※こちらは紅茶用品種とのこと。

日本の新しい品種も全く飲めていないっていうのに、世界中でどんどん新しいお茶が出てくるから大変です。←
公益社団法人静岡県茶業会議所では【新版 茶の品種】が2019年3月に刊行されておりますが、購入したもののあまり見ていないっていう…。
【新版 茶の品種】を購入したい方はこちら

チャノキに限らず、お米や野菜なども美味しいものや珍しいものが年々増えていくのは、農業試験場(研究所)の方々のおかげですね。

農業(茶業)の奥深さを感じつつ、今後も新品種の動向を追っていきたいと思います。

参照:行政院農業委員会茶業改良所HP