セミナーは出れば出るほど知識が蓄積され(ている気がす)るので、こうして思い返して資料を読み返すのはよい勉強になります。
今回、自身が好んで出席したセミナーは日本茶のものが多かったです。
<セミナー編②>での晩茶の話の中にもありましたが、いまだに5月の新茶がもてはやされる日本茶業界。
日本茶関係の仕事をされている方は「新茶でなければ売れない」とよく仰います。
5月の新茶が出た頃は非常に売れますが、夏以降は売上が落ちるそうです。
その「新茶至上主義」を打破するかもしれない、「熟成」についてのセミナーを受けてきました。
日本茶のビンテージを知るとはどんな内容のセミナー?
講師は「日本茶専門店 錦園石部商店」の石部健太朗さん。
日本茶通の方はご存知の方が多いかと思いますが、「茶の涙」という漫画に出ていらっしゃいます。
どこに出ているかはご自身で探してくださいませ。
ヒントはこちらの写真。(スウェーデンの有名人も一緒にいらっしゃいました)
セミナーでは、4℃で保管されたシングルオリジンの日本茶を24種類飲み比べるというものです。
古いものだと2002年からあります。
拝見茶椀は200㏄お湯が入ります。
茶葉は4gです。
お湯を入れていき、葉がゆっくり開いていく姿を見て、香りを嗅ぎます。
そのあと、網匙を入れて葉をすくい、香りや形状を見ます。
さらに、茶殻を救い上げ、茶液も飲んで味を確認します。
日本茶のビンテージを実際に拝見してみると?
24種類もあるので、なんとなく違いは分かりますが、正直全く何が何やらな状態になります。
こういう拝見茶椀を使って茶を観るのは、あくまでも欠点を探すものになります。
一番はっきりと分かったのが築地2004年産の5キロのバルク(大きな保存袋)で保管していたとそれを小分け(50g)にして保管したお茶の香味の差でした。
これは素人でも分かります。
バルクのお茶は、酸味のあるフルーツのような香りがし、飲むとスパイシーで海苔のような風味も感じました。
50gのお茶は何事もないかのように澄んだ綺麗なお茶。
筆者は勝手に大きな袋に入っている方が香味の変化が少ないだろうと思っていました。
問屋さんはそうやって保管しているから。
実際ヒネ臭(劣化臭のようなもの)が出ると、お茶屋さんや問屋さんは再火入れを行い、香りを飛ばすそうです。
それが悪いことというわけではなく、今までずっとそうやって販売されてきた歴史があります。
石部さん自身も保管をする中でヒネ臭が出て、どうしようと思ったことがあると仰っていました。
ですが、そのまま数年保管しているうちにヒネ臭は消え、品種特有の風味だけが残ったとのこと。
お話の中で何より頭に残ったのは、
■「最近は萎凋香をつけた煎茶が人気がある。(花のような香りなど)
■今、ヒネ臭を一般の方が飲んだ時に「劣化臭」とは感じない。
■ヒネ臭がある煎茶を甘い良い香りがあるいう方がいる。
■同じものを均一に作ろうというルールの中で従来「ヒネ臭は悪い」という品質評価をしていただけであって、ヒネ臭を良い香りだとするならば、大事なのは健康被害がなく美味しく飲めること。
という話でした。
確かに、ここ数年、<萎凋緑茶>が多く作られるようになりました。
従来はタブーとされてきた「萎凋香」をあえて付けた煎茶が発売されるようになっています。
今回の世界お茶まつり2019でも、静岡県農林技術研究所茶業研究センターが「香り煎茶」の機械を開発して、それを試飲することもできました。(一括して萎凋を機械で行うそうです)
試飲させていただくと煎茶としての香味の他に、花のような香りがして若い方に好まれそうな味わいでした。
結び
「煎茶は仕上げの段階で水分量は5%以下。
賞味期限はあっても、腐るものではない。
きちんと作られているもので、低温(4度)で保管をすれば自宅の冷蔵庫で熟成させることが出来る。」
つまり、普洱茶やワインのように購入者自身で長期間楽しむことが出来ます。
子供が生まれた時に購入した茶を成人した日に開封して飲む、というようなこともできるようになるということです。素晴らしい!
新茶だけを良しとするのではなく、熟成させるという楽しみ方もあるというだけで飲み方の幅が広がります。
売上が伸びない、新茶しか売れない、放棄茶園が増えている等々。
悲しい話しか聞かない日本茶業界。
これからビンテージ茶の化学的な裏付けなども研究されていくのだろうと思いますが、日本茶の未来は明るいのだと感じさせていただけるセミナーでした。
他にも個人的に勉強になったことが多数ありましたが、是非多くの方に受けていただきたい内容なので胸にとどめておきます。笑
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