旅の思い出2019年5月-京都府茶業研究所①(本ず栽培)-

八十八夜の集い幕 茶にまつわる旅

GWに茶旅をしてきました。

プロフェッショナルの友人にアテンドしてもらい、あちらこちらに連れて行ってもらいました。
頭が上がりません。ありがとう!!

筆者がまずテンションマックスになった数か所からご紹介しようかと思います。

京都府農林水産技術センター 農林センター茶業研究所

茶業研究所は全国にいくつかあります。

静岡、熊本、三重、埼玉…など。

筆者は数年前に静岡の「野菜茶業研究所 金谷茶業研究拠点」の見学をさせていただきました。
その時もテンションが降り切れんばかりに写真を撮りまくったことをよく記憶しています。

茶業研究所では、その名の通り茶の研究を行っています。
業務内容は多岐に渡りますが、例えば、新しい品種の開発等が行ったり、茶業の指導などを行っています。

今回筆者は「宇治新茶 八十八夜茶摘みの集い」という5/2に行われたイベントに参加し、茶業研究所の見学をしました。

手揉茶の体験、茶摘み体験などなど様々なイベントが行われており、研究所の中も一部のぞくことができます。

なかなか一般人は中に入ることがありませんので、こうした公開イベントは非常にありがたいです。
▼参照:宇治新茶 八十八夜茶摘みの集い

宇治と言えば…

宇治と言えば、抹茶を思い浮かべる方も多いかと思います。
▼参照記事:本物の抹茶(仮)と量が多くて価格の安い抹茶。違いはなに?(加筆修正あり)

もしくは玉露を思い浮かべる方もいらっしゃるかも知れません。

抹茶も玉露もどちらも覆いを被せて、摘み取る前に日光を遮ることによって旨味を増す栽培方法になります。

これを「覆い下栽培(おおいしたさいばい)」と言います。

その覆いをかける方法にはいくつかあります。

①支柱を立てて覆いをかける

覆い寒冷紗

 

②直掛け

直掛け寒冷紗

「直掛け」はその名の通り、茶葉に化学繊維を直に掛けます。
めくると、緑の葉っぱが元気に出てきます。

この黒い化学繊維は「寒冷紗(かんれいしゃ)」と言います。

霜害を防ぐために掛けることもあります。

こちらでは、いつ頃どれくらいの遮光率のある寒冷紗をかけているのか、実験を行っているようでした。(それぞれに札がついていました)

他にも、野菜のようにアーチ形に支柱を立て、そこに繊維をかける方法もあるようです。(筆者はまだ生では見たことがありません)


野菜を育てている畑などでも見かけるので、見たことがある方は多いかと思います。

最近は色も黒や白だけではなく、様々販売されていますね。

煎茶の場合は、直射日光に当たったまま摘み取られますが、抹茶や玉露、かぶせ茶は摘み取りの数週間前から数日~数週間覆いをし、旨味成分が多く、柔らかい芽を育てます。
※日数や期間などはその年によっても異なりますし、作る茶種によっても異なります。

昔はどうやって作っていたの?

16世紀後半にはこの宇治で「覆い下栽培」が始まったといわれています。

当時は旨味を多く、というよりは霜を防ぐために覆っていたものであったようです。
※ちなみに、玉露はさらにあと、江戸後期くらいに作られるようになります。

千利休の頃、さすがに今使用している化学繊維の寒冷紗はないですよね…。
どうやって覆いをしていたのでしょうか。

その時代は、「本ず栽培」でした。

「本ず」というのは、<よしず>と<藁>で茶を囲う栽培方法です。
<よしず>はすだれのようなもの。
<藁>は…わらです。

<よしず>は実家の日よけに、昔使っていたのを思い出します。
<よし>の別名は<あし(葦)>というイネ科の植物です。

かの有名な「人間は考える葦である」の<あし>です。
※フランスの哲学者、パスカルの名言



天然の植物を使用して覆いを作っていました。

当然、今のように支柱は金属ではありません。
竹などを組み合わせ、その上に命綱もつけずに乗って、藁を敷きます。

とんでもない手間と労力がかかることは想像に難くないですよね。
風が強ければ、藁は飛んでいくでしょうから、何度も敷きなおしが必要だったとも考えられます。

現在は多くの農家が化学繊維を使用しています。

現在では主流ではなくなった「本ず栽培」を今回茶業研究所で見学することができたのです。
テンションが上がりました。(マニア)

本ず体験

本ず

<本ず>の中に入ると、少しだけひんやりしました。
丁度前日に雨が降っていたということもあり、下がぬかるんでいました。

歩くと、ふわふわと柔らかい土を足裏に感じます。

一方こちらは、化学繊維の寒冷紗。

寒冷紗

半分ずつになっているため、<本ず>と<寒冷紗>をどちらも体験できました。

入り口で職員の方がご説明してくださっていたのですが、寒冷紗の方が黒いということもあり、熱がこもりやすいそうです。

確かに寒冷紗を下から触ると熱いのですが、よしずは熱をほとんど感じません。
そして、よしず下の土は柔らかかったのに、寒冷紗下の土は少し硬い印象を受けます。

おそらく、藁が落ちて土を柔らかくしているのではないかとのこと。

さらに、<本ず>はなぜか寒冷紗より紫外線を通さないそうです。

茶業研究所での研究結果により、紫外線量に違いがあることが明らかになっているとのこと。

そして、官能検査による味の違いでも、<本ず>栽培のお茶の方が美味しいという結果が出ているとか。

結び

「本ず体験」をしながら、

昔の人、すげぇ。

と何度呟いたでしょう。
※感想が貧相

職員の方も仰っていましたが、今後もっと化学的な研究が進めば<本ず>を越えるほど紫外線を防ぐ寒冷紗も登場するのだと思います。

現在<本ず栽培>を行っている茶畑は、数えるほどしかなく、希少な存在になっています。

数年前には京都府で「本ずづくりプロジェクト」という活動を行っていたようですが、最近はどうなったのでしょう…。

手元にあるもの(よしずや藁)で霜を防ぐために茶を覆うことが始まり、色良く味良いものが出来るようになっていったのだと考えられますが、その結果が今でも一番美味しい茶が出来るというのは素晴らしいことだと感じます。

昔の栽培と今の栽培を比べることができる、という貴重な体験をさせていただいて感無量でした。

茶業研究所にはまた是非伺いたいと思います。

他にもお伝えしたいことがたくさんあるのですが、今回はここまでで。

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