2024年も気づけばGWが始まり、新茶シーズンも始まりました。
新芽を摘んでお茶にしたいという方もいるのではないかと思います。
家でも手軽に作れると言えば「釜炒り茶」。
道具もあまり要りません。
筆者も柔らかい新芽を摘んで、趣味で釜炒り茶を作っています。
釜炒り茶の製法を色々考えているうちにふと、釜炒り茶のことをあまり知らないことに気づきました。
ということで釜炒り茶の歴史や作り方などをまとめてみることにしました。
淹れ手というよりは作り手目線のことが多いと思いますが、ゆるっとお読みください。
釜炒り茶ってなに?煎茶と何が違うの?
釜炒り茶釜炒り茶、と気軽に言ってますけどそもそも釜炒り茶ってなんでしょう。
「釜で炒っている」ということは読んで字のごとくですが、作ったことがない方からすれば「いつ」「なぜ」釜で炒っているのかは分からないのではないかと思います。
ここでまず緑茶の製法から簡単にご説明します。
緑茶には煎茶、釜炒り茶、碾茶(抹茶の原料)などなど様々あります。
よく「不発酵茶」と言われます。
この「不発酵」という言葉が難解なため、多くの方がここで???となります。言葉がね、アレよね…。
茶葉の細胞中には水分、カテキンなどのポリフェノール類、酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)などが入っています。
茶葉から水分が抜けると細胞壁が壊れ、ポリフェノール類が酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)によって酸化されていきます。
この酸化酵素の働きを最大限生かしたのが紅茶
酸化酵素の働きをできるだけさせないのが緑茶
になります。(超ざっくり説明)
酸化酵素はタンパク質ですので、熱を加えればそのあとの酸化は防げます。
つまり、緑茶は酸化酵素の働きを真っ先に熱で止めます。(紅茶は工程最後で加熱)
生葉を摘んで、熱を加えて、酸化酵素の働きを止めてから揉んだり(揉捻)していくのが緑茶です。
その熱の加え方が「蒸す」か「炒る」か、です。
蒸し製なのが煎茶
炒り製なのが釜炒り茶
になります。(続超ざっくり説明)
この酸化酵素の働きを進めることを「発酵」と通称読んでます。
「発酵って味噌とか醤油とか???」
となりますよねー。(;^_^A
なると思います。
「発酵」という言葉はあくまでも通称だと思っておいてください。(説明すると大変長くなりますので)
「発酵」=「酸化発酵」
▼参照:紅茶の発酵とは?ワインの発酵と何が違う?紅茶の「発酵」工程について改めて考える
まとめると、「釜で炒って酸化酵素の働きを止めた緑茶」=「釜炒り茶」です。
釜炒り茶の歴史
釜炒り茶のルーツは中国です。
チャノキのルーツも中国南部と考えられていますし、作り方も中国から伝わってきたものです。
(それより以前から自生していたチャノキから釜炒り茶を作っていたという説もあります)
釜炒り茶が伝わってきたのは西暦1500年頃と言われています。
佐賀・長崎を中心とする「嬉野製」
熊本・宮崎を中心とする「青柳製」
うれしの茶の歴史は、1440年(室町時代)に中国大陸から移住した唐人により、嬉野町上不動皿屋谷で自家用に栽培されたのが始まりで、1504年(室町時代)には明から渡来した陶工「紅令民(こう れいみん)」が南京釜を持ち込み、釜炒り茶の製法を伝授したと言われています(嬉野町史より)。
嬉野市HPより
西北山間部で昔から行われてきた釜炒り茶の製法は、青柳製と呼ばれ、1600年頃朝鮮から熊本県を経由して伝わったものと言われています。
みやざき茶の歴史より
細かい作り方もかなり違うと思いますが、見た目大きく違うのは釜の角度です。
▼画像引用:茶業研究報告 日本の釜炒り茶
歴史については諸説あり、今後の研究が待たれるところですので、ここでは
「釜で炒って緑茶を作る製法が1500年代あたりに中国から伝わってきたようだ」
というくらいで良いのではないかと思います。
釜炒り茶は今も九州がメインの印象です。
宮崎茶房などはAmazonなどでも購入できるので、一度お試しいただくと良いかも知れません。
釜炒り茶はどのような製法で作られているの?
もうすでに製法について書いていますが、工程としては以下のようになります。
もちろん超ざっくりです。
例えば炒り方にもいくつもやり方があります。
大きく言えばこの三工程なのですが、大きな茶工場などで作る場合はいくつかの機械を通ります。(炒り葉機、揉捻機、中揉機、水乾機、仕上げ釜など)
詳しい方はご存じだと思いますが、中国式の釜炒り茶(龍井茶など)は大きな釜だけですべての工程を行いますし、「炒る」というひとつの工程を取り上げても作り手によって様々な工夫が見られます。
地域によっても違いがあるようです。
よって、筆者はホットプレート(もしくは中華鍋)で通常作っているため、それに対応して美味しく仕上げるように考えて作っています。
作り方については何度かこちらのブログでもご紹介していますので、よろしければそちらをどうぞ。
▼参照:茶を作る2020‐出始めの新芽で作る釜炒り茶‐
釜炒り茶、煎茶(紅茶や烏龍茶)を作ってみたいという方におススメの本がいくつかあります。
▼参照:製茶をしたい人にお勧めの本「茶の科学」「茶の絵本」
▼参照:製茶を始める前に。「茶の絵本」がおススメ!
一応言い訳をしておきますと、数年前のブログですのでもう少し美味しそうに作れるようにはなってます。言い訳ですけど。
釜炒り茶の特徴は?淹れ方はどう?
釜炒り茶の特徴
釜炒り茶は通常煎茶より渋みが少なく、香りが高いと言われます。
こちらは絶対、という訳ではないと思いますが筆者自身が様々な釜炒り茶を飲んだ経験からもそう感じています。
渋みに関して言えば揉圧(揉む力)が煎茶より弱いため、渋み成分のカテキンの溶出が少ないということのようです。
▼参照:釜炒り茶と煎茶の渋味の解析」
香り成分についてはある本で「蒸熱(蒸し製緑茶)に比べて釜で炒っている分、すべての葉に熱が入るまでに時間がかかる。そのため一部は酸化酵素が働き、香気成分なども蒸し製緑茶より出やすい」と書かれており、そうなのだと思っていますが、もしかしたら最近の研究では変化もあるのかも知れません。
こちらはもっと色々論文に当たってみたいと思います。
香りと言えば他にも釜炒り茶は「釜香」という炒ったときの香りが特徴と言われています。
少し香ばしい香りでしょうか。
とはいえ、こちらも釜香がほとんどないものもあります。
釜炒り茶の淹れ方は?
右の写真は筆者が先日作った釜炒り茶です。左はいただきものの今年の煎茶。
急須(ティーポットなど)に1人分茶葉2g~3g程度入れます。
お湯は熱湯よりは少しだけ冷ましたものがおススメですので、沸かした熱湯を一度湯飲みに入れるか湯冷ましなどに移します。(湯温は85度~90度程度がおすすめ)
その後、急須に注いで30秒から1分ほどで抽出。
2煎目、3煎目とお召し上がりいただけますので、是非変化も楽しんでください。
淹れ方もパッケージの裏などに書いてある方法でお試しいただくのが一番安全かと思います。
上記は一般的な淹れ方です。
筆者おススメとしては、煎茶は湯温が70度~80度ですが、少し高めのお湯85度~90度程度で淹れていただくところです。
結び
いかがだったでしょうか。
今回は釜炒り茶の製法、歴史、淹れ方などをざっくりご紹介しました。
GWが始まり、丁度茶摘みも5月頭から始まるところが多いです。
お茶を摘んでみたい、お茶を摘んだけどどうしたらよいか分からない、というお声をよくいただくので今回は家にある道具で作ることができる釜炒り茶のことをご紹介しました。
筆者も今年は釜炒り茶を何度か作っています。
今年も無事に美味しく作ることができました。
さて、只今紅茶を製造中。
こちらもうまくいっていると良いですねぇ。
良いGWをお過ごしくださいませ。
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