「小規模農家による持続可能な紅茶生産を考える」オンラインセミナーに参加して

海外の茶畑 茶のいろいろ

前回に続き、オンラインセミナーに参加して思ったことなどを少しまとめてみたいと思います。

自身でも以前の記事で「サステナブル」をキーワードとしてまとめたものがいくつかありますが、トレーサビリティやサステナブルについては日本より海外の方が非常に強く意識している傾向があるように思います。
▼参照記事:茶とも関係のあるチョコレートのBean to Bar、サステナビリティについて

最近はどの作物に対してもサステナブルな経営や畑管理が求められているように見受けられます。

実際今回のセミナー主催の一般社団法人ソリダリダード・ジャパンでは茶を含めた14種類の作物について活動を行っているそうです。

筆者自身もまだまだ勉強中ではありますが、今回のセミナーをまとめることで次なる学びにつなげていきたいと思っています。

「小規模農家による持続可能な紅茶生産を考える」セミナー概要

ソリダリダード
一般社団法人 持続可能なサプライチェーン研究所(通称:ジゾ研)と一般社団法人 ソリダリダード・ジャパンのウェビナーシリーズの第六回目です。
▼セミナー告知文:持続可能なサプライチェーン研究所 #6 「小規模農家による持続可能な紅茶生産を考える」

● 開催日時:2021年1月28日(木)16時00分~17時30分
●登壇者:
アリジット・ラーハ (インド茶協会 事務局長)
クリシャン・カーチャル(ソリダリダード・アジア TRINITEA担当)
草野結子 (キリンホールディングス CSV戦略部シニアマネージャー)
●質疑応答モデレーター:
吉田秀美(一般社団法人持続可能なサプライチェーン研究所代表理事)通訳もついていたので英語が苦手な筆者にも内容はよく分かりました。1時間半というウェビナーでしたがあっという間に終わったという印象です。

インド茶協会の話によれば…

最初にインド茶協会代表からインド茶全体の説明がありました。

・インドの茶葉の84%は北東部のアッサム州と西ベンガル州で生産されている
・13億9000万トンの紅茶を生産している
・世界で第4位の輸出国であり、世界の茶の輸出量の13%を占める
・120万人の茶従事者を直接雇用している
・10億の茶はインド国内で消費
・ここ数十年で業界の枠組みが変化し、インド茶生産の50%が小規模農家となっている

筆者が紅茶と出会った20年ほど前はまだ大規模なティーエステートが主流だと言われていたように思います。

ですので、今もなんとなくそのイメージが強く、今や半分が小規模農家の生産だと聞いた時の衝撃が少々強かったです。
知識の更新が追い付いていないという情けない状況…

では、小規模農家の現状はどうなのでしょう。

・生産規模が小さい(95%の小規模農家は1ha未満の土地しかない)
・地理的に散在している
・トレーサビリティの問題
・GAPやマーケットの状況などの情報に疎い

地理的に散在していることにより、仲買人に頼らざるを得ず(直接交渉ができないため)、茶の価格が低下してしまうそうです。

規模が小さく量も作れないので恐らく強気にはなれないというところがあるのでしょう。。

また、小規模農家はあまり向上心はなくただ生きるために畑の管理をしている状態のため、現在のティーマーケットの状況やGAPのような制度の知識もほとんどないようでした。

インド茶協会とソリダリダードがタッグを組む

生産をしている50%の小規模農家を底上げしなければ、インド茶の未来は暗いわけですから、インド茶協会(ITA)とソリダリダードが手を組んで「TRINITEA」というプログラムを作りました。

■「TRINITEA」プログラムの概要

資料によれば、
・茶畑作業の改善
・労働環境の改善
・生葉の品質向上
・環境への影響の改善
・マーケットの開発、よりよい市場探しと正当な価格
・トレーサビリティの向上
・持続可能性の改善
が挙げられていました。
英語訳がおかしかったらすみません…。

小規模茶農家に対しては「より良い生葉を作るための知識の共有」などを行い、茶工場側には「品質保証や生葉調達ルートのコスト削減」、ティーパッカーには「サプライチェーンにおけるリスク管理」等をそれぞれに教育を施すことで全体のレベルを上げることが目標となっています。

■「TRINITEA」プログラムの具体例

・小規模農家に土壌の分析や施肥、正しい植え付けや収穫について教える
・アプリを作って小規模農家に自己評価を行ってもらう
・トレーサビリティのシステム構築

等を行っているところとのこと。

現在、茶の生産や収穫のプログラムを運用するためにアッサム農業大学と連携し、8000人から9000人ほどの人がすでにトレーニングを受けているそうです。

今後より良いシステム作りがなされていくことを願います。

日本とインドの連携

インド側としては小規模農家が個々に製茶を行い、個々に販売などを行っていくことを推奨しているようです。

「TRINITEA」は独自の認証のようなもので、それぞれの小規模農家の後押しをするように資金の提供を行ったり、輸出の手助けをしたりしているとのこと。

「TRINITEA」の説明が終わると、キリンホールディングス株式会社が取り組んでいるサステナブルの活動などについてお話がありました。

キリンは主にスリランカから茶葉を輸入しています。

また、インド側はRTD(いわゆるペットボトル)での普及や販売を考えているという話がありました。
現在はペットボトルの普及率が低いようですが若い方たちは少しずつ利用しているようです。

当然、キリン側は安定して大量な茶葉が必要ですので現状大型のティーエステートからしか仕入れを行えません。
キリン側はスリランカとの取引が主であることもありますが…

ここはなかなか難しい大人の事情ですね…。

インド側はキリンだけではなく、参加している日本企業などに対して「直接的な寄付を受け付けている」ことなどの資金援助をさらりと(結構しっかりと)していました。

結び

このセミナーでインドの小規模農家の状況が色々と見えて、非常に興味深かったです。

合わせて、インド茶協会が頑張っていて資金援助が必要なことも理解はできましたが、日本の茶業もなかなか厳しい状況ですので日本としては日本の茶業を守ることに注力していただきたいと思ったのも本心です。

その上で互いに協力しあっていける部分を探し出すのがまず先決であろうと。

コロナ禍で世界中が厳しい状況である訳ですから。

自身が小規模農家な訳ですので、インドの小規模農家の気持ちも日本の小規模農家の気持ちも多少理解できてしまうので複雑ではあるのですが…。

筆者自身も常に世界の状況も見ながら、自身の足元も見ていかなければならないと思う今日この頃です。

嫌な予感はしていて、何度も読み返しをしたのですがやはりまとまりません。。

ひとまず、セミナーの感想というところで終わりにしたいと思います。。

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