2018年8月26日のインド「The Telegraph」によりますと、アッサムティの販売促進のため、ブランディングを強化していく話合いが行われたことを発表しています。
主なメンバーとして、インド紅茶協会(ITA)、インド北東部紅茶協会(NETA)、アッサム茶プランター協会(ATPA)の代表など。
現在アッサムティの一部で使用されている地理的表示(GI)保護をCTCを含む「アッサムティ」全体に広げることにより、需要の拡大と適正価格の適用を進めていくとのことです。
地理的表示(GI)保護について
地理的表示(GI:Geographical Indication)保護で有名なのは、フランスの「シャンパン」ではないでしょうか。
フランスのシャンパーニュ地方で作られ、ある一定のクオリティを保っている発泡性ワインに限って「シャンパン」と呼ぶことができます。
つまり、「ブルゴーニュ地方のシャンパン」という表現はできなくなるという訳です。
地理的表示(GI)保護は「その土地の特徴を生かして作られたものを知的財産として保護するための認定制度」ということ。
日本でも平成27年6月1日より地理的表示(GI)保護制度が施行されています。
例えば、「夕張メロン」「八丁味噌」「鹿児島黒牛」など。
日本の地理的表示(GI)保護は農林水産省に申請を行い、認定されると日本独自のGIマークをその商品に付することができるようになります。
地理的表示やGIマークを不正利用した場合は罰則も設けられています。
▼参考:農林水産省HP
お茶の地理的表示(GI)保護について
緑茶、中国茶、紅茶についても各国で地理的表示(GI)保護制度への登録が進んでいます。
インドは?
紅茶の中でも特に有名なのは「ダージリンティ」ではないでしょうか。
インド北東部にある「ダージリン」、インドの中でも小さな産地であり、インド全体で生産される茶のうちの1%ほどを担っています。
そして、世界中にファンが多く、実際には生産量の4倍~5倍程度の「偽ダージリン」が世界中に流通をしていたと言われます。
つまり、《ダージリンの産地でないもの》や《ダージリンを少量ブレンドしている》等の「まがい物ダージリンティ」が溢れていたということになります。
今では考えられないほど価格が安くて粗悪な「ダージリン」を飲んでいた可能性もあるということですね。。こわいこわい。
そのような状況を打破すべく、インド紅茶局(Tea Board of Indea)にて認定マークが作られ、ダージリン産100%の茶のみがこの認定マークを使用することができるようになりました。
※インド紅茶局では1953年に施行されたインド紅茶法により、87あるダージリンの茶園の茶の栽培から輸出までを一括で管理しています。
1999年に「ダージリン」という言葉と「ダージリンのロゴ」が商標登録されました。
同時に地理的表示(GI)保護認定もされ、のちに著作権も取得します。
※トップ画像が「ダージリンのロゴ」です
さらに、2011年にはインド国内だけではなく、欧州連合(EU)にてPGI(Protected Geographical Indication)に「ダージリンティ」が登録されました。
2011年から5年間で完全に「ダージリン産100%のものしかダージリンと名乗れない」ように取り締まりを強化していったそうです。
実際に現在数字の面から見て、世界中に販売されているダージリンが「ダージリン産100%」であるかどうかはわかりかねます。
とはいえ、以前に比べ「ダージリンティ」が世界的に認知され、守られるようになったことは間違いないでしょう。
中国は?
中国も世界的な潮流に乗り、かなり前から自国の各地の銘茶を守り、発展させていくために努力をしてきました。
分類や基準を明確にした上で地理的表示(GI)保護認定を受ける茶の種類がますます増加しています。
例えば、龍井茶(ろんじんちゃ)はどこの地域で作られた、どのような製法のお茶で、味わいや茶葉の大きさなどはこのようなもの、というように国家基準を定めています。
筆者が中国茶の教室に通っていた十数年前、やはり分類などが煩雑で、非常に混乱した覚えがあります。。
中国は茶の生まれ故郷のような場所であり、様々な製法の茶があり、多くの産地があります。
世界トップクラスの生産国であり、輸出国でもあります。
世界に名だたる銘茶がそこかしこにある国です。
中国茶は価格や品質に非常にばらつきがありましたが、こうした国家基準が設けられ、明快にわかりやすくなることで間口が広がり、より発展を見せるのではないかと思います。
▼参考:合同会社ティーメディアコーポレーション代表ブログより
日本は?
日本にも平成27年より日本の地理的表示(GI)保護認定が始まったことを上述しています。
日本の茶として地理的表示(GI)保護認されているものは、2018年8月に更新されているもので、
・八女伝統本玉露
・西尾の抹茶
【追記】2020年に西尾の抹茶はGI取り下げをしています。
そちらはこちらの記事でどうぞ。
の二点のみです。
日本の伝統文化でもある日本茶の登録がたったの二点とは寂しいことです。。
今すでに申請済みのもの、これから登録されるもの、様々あるのでしょうがより多くの産地の地理的表示(GI)保護認定が増えていくことを願います。
「八女伝統本玉露」は福岡県八女市で伝統的に作られている玉露です。
玉露は、新芽が出る直前の一定期間に寒冷紗(かんれいしゃ)などの黒い覆いをかけて、日光が当たらないようにします。
これを行うことで旨味が凝縮したお茶になります。
現在は茶木に直接寒冷紗をかけて覆ってしまうことが多いのですが、伝統的な玉露は茶木と覆いの間に空間ができるよう、支柱を立てて藁で覆いをします。
▼参照記事:旅の思い出2019年5月-京都府茶業研究所①(玉露の本ず栽培)-
また、通常の煎茶作りでは《機械摘み》が一般的ですが、伝統本玉露は一芽一芽手で摘みます。
機械で摘むと、効率は当然良いですが芽揃えが悪くなってしまいがちです。
さらに、煎茶の場合《機械摘み》ゆえに機械で刈りやすいように畝を仕立てる必要がありますが、伝統的な玉露は茶木を自然に育てます。
基本的に茶摘みの時期は上へ上へ茶木が伸びていきます。(一年の摘み取りが終わったら刈り込みます)
このように古くから作られている伝統的本玉露は、旨味が強く、自然の力強さを味わうことができる逸品です。
伝統的本玉露は八女だけではなく、京都などでも作られていますが現在は「八女伝統本玉露」のみGI登録をしているようです。
結び
このような気運に乗り、アッサムティも一部に適用されているGIをアッサム全体に広げたいということなのでしょう。
また、日本でも着々とGIの登録品目が増えています。
通常GIはその認定している国内に限られてしまいます。
しかし、ついに2018年7月に《日・EU経済連携協定(EPA)》に署名がなされ、合意に至りました。
《日・EU経済連携協定(EPA)》の中には「互いの国のGI認定品目について、互いの国で保護をする」という取決めも組み込まれています。
今後欧州連合(EU)の商品も関税が撤廃(削減)されることにより、多く流入してくることが考えられます。
また、日本の商品もEUへ。
その際に互いの知的財産を守りあうわけですから、GI認定商品を増やしておきたいところです。
各国の動向がこれからも気になるところです。
今後もGI登録される茶が増えていくことを期待しています。
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