令和3年度静岡県茶業研究センター成果発表を見て(備忘録的なもの)

未来 日本茶

静岡県茶業研究センター成果発表は一昨年「世界お茶まつり」の会場で拝見し、昨年はYouTubeで、そして今年もYouTubeで見ることが出来ます。

今回もまた非常に興味深く拝見することができましたので、いくつか備忘録的にまとめていこうと思います。(筆者の興味のあるところメイン)

「ドリンク向け超低コスト製茶のための新技術開発」

ドリンク向けの茶葉というのは完成品の形などにはこだわらず、味や色が出ていれば良いもののため、二番茶三番茶でも使用が可能です。

また、通常の煎茶の場合は形状の良さという部分も必要とされているため、形状にこだわらないドリンク向けの茶葉に関しては通常よりもさらに低価格で取引されます。

そのため、一定の基準をクリアしている荒茶を多収安定生産、省力化、製茶効率の向上を目指すことが売上増のカギとなってきます。

生産時間削減
▼令和3年度静岡県茶業研究センター成果発表YouTubeより引用

今回研究発表された新製法ですと、慣行製茶に比べて製造時間が33%も削減されたとのこと。

製造中に発生する多少のロス(砕けてしまう葉)の部分は増えてしまうとのことでしたが、色や味は問題なく、製茶時間も削減できたということで今後も研究が継続されていくとのことでした。
砕けた部分は振るい分けをした後に再加工などをしていくのか、そのあたりも気になります。

製茶時間の削減のために取り入れた製法に興味津々です。

普通煎茶のように形状にこだわらなくて良いため、揉まずに砕いても問題がありません。

その揉まずに砕く「Crush処理」のために使用する機械が紅茶の製造でも使われているローターベイン(ローターバン)に酷似しています。
研究発表の中でもそれは述べられていますが、パーツなども緑茶仕様に開発されているとのこと。

「Crush処理」することにより葉が細かくなるのですが、機械の傾斜角度によって粒度をコントロールができます。

茶葉の状態や必要なものに合わせて茶葉の大きさを変えられるそうです。

また、「Crush処理」の前に「軽Crush処理」が行われるのですが、蒸した後の茶葉をローラーで加重をかけていくので、この段階でも少し粒度は小さくなります。
軽Crush処理
▼令和3年度静岡県茶業研究センター成果発表YouTubeより引用

いずれにせよ面白いのは、煎茶の工程の中で外すことができなかった「揉捻(じゅうねん)」を省いているというところです。

従来の煎茶製造の概念を覆し、機能性や効率を求めて研究が進んでいることをうかがい知ることができます。

「香り緑茶の大量生産における運転条件の改善」

「安価で持続性の高い土壌物理性の改善方法」

こちらでは乗用型管理機で土壌(畝間)の圧密化が進むことを防ぐ目的の研究がなされていることが分かりました。

「ドリンク需要に応える超多収性のチャ新品種候補 『95-7-35』」

こちらでは新しい品種が生まれた詳細が発表されています。

やぶきたよりも多収で、病害虫にも割と強いそうなので、早く飲んでみたいところです。(これから品種登録がされて、令和8年度以降に荒茶が流通する予定とのこと)

『95-7-35』は父親にごこう、母親に香駿が使われているので、香駿好きな筆者としては今後とても楽しみです。

この育種などに関しては以前新しい研究がされたときのことをまとめていますのでよろしければお読みください。
▼参考記事:茶の新品種が今後はスピーディに増えるかも?-静岡大がDNA情報から茶の新育種技術を開発ー

「カンザワハダニ及び天敵チリカブリダニの薬剤感受性」

こちらでは代表的な茶の害虫であるカンザワハダニの天敵「チリカブリダニ」のどちらにも適用のある薬剤、どちらかのみに効果のある薬剤などを調べ、発表しています。

結び

かなり前になりますが、静岡県茶業研究センターにお邪魔したことがあります。

その頃は茶畑のない場所にいた上に植物のことについても知識がなかったため、育種も製茶も詳しくは理解できなかったのですが、自身が茶生産に少しですが関わることによってこうした研究結果も興味深く見ることができるようになっています。成長したなぁ。しみじみ


2013年にこちらの本が発行されて読んだ時から「日本茶の未来」について深く考えるようになりました。

ペットボトル飲料が主流となり、リーフ茶の需要は減る中、この先の日本茶の未来については常に考えていかなければならないのだと痛感しています。

今回のほとんどの動画で、「多収で生産効率が良いもの」と何度も出てきます。

筆者のようなマクロ茶業をしている人間にとってははっきり言ってほとんど関係のないものです。

実際「趣味」程度の小さな小さな業です。

それを逆手にとって、大企業ではできないニッチな部分を目指すにはどうしたらよいか…。

こうして学びつつ、感じつつ、先輩たちの良い部分を参考にさせつつ、自分なりの「茶業」を確立させていきたいと思います。

筆者はまだ種を植えたばかり。

いつか芽が出て、刈り取りができる日まで、今後ともどうぞよろしくお願い致します。(ブログの更新亀の歩みですが。。)

今回の動画はこちらで見られます。↓↓↓↓
ふじのくにメディアチャンネル(静岡県庁公式)

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