日本茶の品評会について~全国茶品評会と日本茶AWARD~

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気づくと4月になっており、エイプリルフールの嘘を考える暇もありませんでした。(?!)

ありがたいことに最近お茶の教室を行ったり、講座を開催させていただいたりが増えています。

先日は緑茶の講座を行ったのですがその中で、緑茶の中には旨味系と香り系のものがあると大別してみることにしました。

今現在の評価として「良いお茶」の定義とは何かを考えるきっかけを作る機会にしてみました。

日本茶のコンテストはどういったものがあるの?

1,全国茶品評会

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全国茶品評会とは「全国の都府県から選抜出品された茶(荒茶)を対象として行われている品評会で、全国茶生産団体連合会と都府県(持ち回り)が主催となり毎年開催される」ものです。

8種類の茶種があります。
普通煎茶(10kg)、普通煎茶(4kg)、深蒸し煎茶、かぶせ茶、玉露、てん茶、蒸し製玉緑茶、、釜炒り茶

茶種ごとに審査が行われ、最も優秀な成績(一等一席)の出品者には「農林水産大臣賞」が授与されます。

また、「産地賞」は同じ茶種で同一市町村から3点以上出品があり、成績上位3点の合計審査得点が最も高い市町村に対して優勝旗が授与されます。

例をあげると、2021年は第75回になりますが以下のような結果になっています。

【農林水産大臣賞受賞者】
75回農林水産大臣賞

【産地賞受賞市町村】
75回産地賞
▼引用:埼玉県HP

よくお茶屋でも「農林水産大臣賞受賞」と書かれた茶が売っています。

例えそれが過去の受賞でも全国で1位をとっているのですから誇らしいものですし、また消費者側も茶を選ぶときの一つの指標となります。

筆者も農林水産大臣賞を受賞絡みの茶を数回いただいたことがありますが、やはり味や香り、渋みなどのバランスが良く、素晴らしいものです。

機会があれば是非お試しになることをお勧めします。

2,日本茶AWARD

アワードポスター
▼引用:日本茶AWARDInstagramより

全国茶品評会は今年で76回目になります。
1947年(昭和22年)から毎年行われてきた品評会です。

逆に数年前に作られた品評会が日本茶AWARDです。

2014年から始まっています。

全国茶品評会が8種に対して、日本茶AWARDは10種。
アワード
▼引用:日本茶AWARD審査規定より

茶種も烏龍茶や紅茶など、全国茶品評会に含まれないものが入っています。
また、ブレンド(合組)したお茶、という部門も現在あります。

全国茶品評会では減点対象になるような点(例えば「萎凋香」)を改めて評価しているというところに、旧来型の品評会とは違った見方で日本茶を評価していると言えるでしょう。

アワード賞
▼引用:日本茶AWARD「審査方法と賞」より

全国茶品評会と同様、上位の方には農林水産大臣賞が授与されます。

3,その他

■世界緑茶コンテスト

毎年開催している【斬新でお茶の未来を感じさせる商品】を提案するコンテストです。
お茶の葉自体の品質のみならず、商品コンセプト、ネーミング、パッケージデザイン、コストパフォーマンスなどの総合的な商品性を競います。

このコンテストは市場性の高い“商品”を提案し、消費者の選択の幅を広げることで、茶の新たな需要を創造し、消費の拡大に繋げることを目的に開催しています。
多様な商品を提案していただくため、緑茶に限らず紅茶や烏龍茶等も対象としています。

毎年世界各国から様々なお茶が集まる国際的なコンテストとして定着しており、入賞茶は各種セミナー会場や、国内外の食品見本市などで展示、紹介をしています。
▼引用:公益社団法人世界緑茶協会HPより

世界緑茶コンテストはパッケージを評価しているのも面白いところです。
また、海外の方も出品されるので様々な言語が並んでいます。

■JAPANESE TEA SELECTION PARIS(ジャパニーズティー・セレクション・パリ)

パリで唯一の日本茶コンクール「ジャパニーズティー・セレクション・パリ」。2017年から開催し、今年は4度目を迎えます。毎年多くの日本茶生産者様にご参加頂き、当地フランスで、また日本で、徐々に話題になっております。第2回目までは弊社主催の日本食イベント「セボン・ル・ジャポン」内で開催しておりましたが、更に専門性を高め、第3回目より独立した品評会として実施しています。

コンクールでは、日本茶インストラクター協会より任命されたフランスにおける日本茶大使 能宗美佐子氏 の監修の下、厳正な審査を行います。計3回行われる審査では、毎回会場を変え、フランス人一般人からフランス料理界トップシェフ、フランス茶業界バイヤーなど、様々な審査員を迎えます。

当コンクールを通してフランス人の嗜好を知ると共に日本茶の魅力を発信し、フランス人一般人とプロフェッショナルへの認知度を高め、日本国内外での日本茶市場の拡大を目的としております。
▼引用:JAPANESE TEA SELECTION PARIS HPより

こちらは日本茶AWARDよりさらに新しく2017年からになりますが、最近非常に耳に目にするようになりました。

フランスのお茶の専門家はもちろん、シェフやワインの専門家の方などが評茶しているところが興味深いです。
もちろん他にも品評会はありますが、今回はこの辺で…。

全国茶品評会と日本茶AWARD、それぞれの違いとは?

現在品評会としてメジャーな全国茶品評会と日本茶AWARDを見比べた時、どこが主として異なっているのでしょうか。

1,審査員が違う
2,鑑定方法が違う
3,目的が違う

大きく分けてこの3点でしょうか。

恐らく細かく言えばもっとあるのだと思うのですが、分かりやすく3点にまとめてみました。

1,審査員が違う

全国茶品評会では、茶の専門審査員たちによる評価になります。

日本茶AWARDでは、1次2次審査は専門審査員が行いますが、3次審査には一般の方に投票してもらう形式になっています。

また、1次審査には日本茶のプロの審査員だけではなく、生産者や珈琲や紅茶のプロの方もいらっしゃいます。

2,鑑定方法が違う

鑑定
一般的に日本茶の評茶は審査茶碗(白色磁器製、200cc)に茶葉3g(基本は3g)を入れ、熱湯を注いで香りや水色、香りなどを鑑定します。
▼参照記事:世界お茶まつり2019!<セミナー編③>「日本茶のビンテージを知る」

鑑定する際、全国茶品評会の審査項目は、

1.外観(茶の形や色)
2.香気(湯で浸出した時の立ち上る香り)
3.水色(湯で浸出した時の茶の色)
4.滋味(茶の味)

200点満点から減点方式で評価していきます。

全国茶品評会は「外観」に点数が高いのが特徴であると言えます。
対して日本茶AWARDでは、実は「外観」は審査しません。

日本茶AWARDの審査規程にしっかりと明記されています。

日本茶AWARD立ち上げの頃からいらっしゃる方が以前仰っていたのですが、「外観ばかりが美しくして、中身(味や香り)のない茶が高得点になってしまうことが従来方式の審査だと起こりうる」と。

日本茶AWARDでは、口に含んだ時の味や香りを重視しているとお話されていました。

また、日本茶AWARDでは画一的な審査方法をやめ、それぞれの茶が最適な条件で抽出できるように工夫しています。

湯量はすべて一定150ccと定められています。審査方法アワード

生産者が一番良いと思う茶葉量を設定して鑑定してもらえるというのはとても嬉しいのではないでしょうか。
▼引用:日本茶AWARD「審査規程」より

3,目的が違う

そもそも論になってしまうのですが、全国茶品評会は生産者の技術の向上、茶業の発展を目的に行われているものになります。

生産者同士が製茶技術を競い合う場、とでもいうのでしょうか。

日本茶AWARDはHPのトップにその趣旨が強く表れています。

様々な分野で新しい価値感が生まれている現代、
日本茶もまた新しい時代を迎えようとしています。

日本茶AWARDでは日本茶の新たな価値を見出し、
多くの方に多種多様なお茶の美味しさや香りを伝えていきたいと考えています。
そのため、お茶を飲む消費者や多分野のスペシャリストの視点も取り入れ、
出品されたお茶の個性や魅力を引き出す新しい審査法を取り入れています。

また、茶葉の価値だけではなく、
お茶を味わう、お茶を淹れるといった生活スタイルとして提案することで、
日本茶の多様性とその幅広い魅力を国内はもとより世界に発信していきます。

形が不格好であっても、消費者が飲んで美味しいと思った茶が正義、という意志表明であるように感じます。

結び

全国茶品評会と日本茶AWARDは相対するものであるという意見も耳にします。

確かに、外観の点数が高い全国茶品評会に対して、外観を評価しない日本茶AWARD。

茶業のプロが審査を行う全国茶品評会に対して、茶と関係のない職業の人や一般の方が審査を行う日本茶AWARD。

対する面は多く見られます。

しかし、結局目指すところは「良い茶」「うまい茶」「売れる茶」でありますから、お茶好きな一般人である筆者としてはどちらの品評会でも高く評価されているものには興味があります。

また、冒頭に書いた「旨味の茶」と「香りの茶」の話ですが、戦後から高度経済成長期にとにかく売れた(増えた)緑茶のように旨味がしっかり効いた茶が「良い茶」という認識も現在は少し変わってきていると言われます。

途中で少し書きましたが全国茶品評会で減点対象になりうる「萎凋香」を持った煎茶や釜炒り茶の評価も高くなり、合組をされている茶だけではない単一品種の茶も増加傾向にあります。

香りに特化した品種や機能性に特化した品種なども続々と増えています。

海外への輸出をより増やそうとする国の動きもありますし、今後ますます日本茶の多様性が求められていくことになるでしょう。

筆者自身、日本茶と何十年も付き合ってきた訳ではありませんので過去のことは先人たちの話を聞いたり、本を読んだりすることで留まっていますが、未来のことはあれこれと妄想することができます。

従来の枠に捕らわれず、新しい顧客を掴むために必要なこと。

過去の経験を踏まえ、未来へ向けて変化すること。

新しいスタイルの製茶、新しいスタイルの販売方法、新しいスタイルの流通経路…。

色々と想像しているだけで楽しいものです。

急須が家にないから…、ペットボトルばかりで…、高齢化で廃業してしまって…。
正直悲しい話を聞くことが多い現在の茶業ではありますが、筆者は決して茶業の未来は暗くないと思っています。

筆者自身が何が出来るか手探りの日々ではありますが、日々「茶と遊ぶ」方法を考えています。

様々な暗い出来事も多い日々ですが、そこだけは前向きに今年の新茶期も頑張っていきたいと思います。

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