地理的表示(GI)と地域団体商標。茶に絡む商標にも様々なものがある?!

新芽を乗せた手 茶のいろいろ


先日「宇治」の商標登録について少し追記をしました。

茶には国に登録し、国から保護されている名称等があります。

また、国に登録はするものの、団体で管理しているものもあります。

今回は「地理的表示(GI)」と「地域団体商標」についてまとめてみたいと思います。

「地理的表示(GI)」とは?

GIの図
何度かこのブログでも扱っています。
▼参照記事:インド、アッサムティの地理的表示(GI)保護制度
▼参照記事:「西尾の抹茶」が地理的表示(GI)保護の登録取り下げ?!GIの問題点とは?

一番簡単な例は「インドのダージリン地方で作られた紅茶以外、ダージリンティと名乗ってはいけない」というものです。

もしくは、「フランスのシャンパーニュ地方で作られた発泡性のワインしか、シャンパンと名乗ってはいけない」でしょうか。

地理的表示(GI)は「その土地の特徴を生かして作られたものを知的財産として保護するための認定制度」ということ。

元々、茶としては「八女伝統本玉露」と「西尾の抹茶」が登録されていました。

しかしながら、「西尾の抹茶」は2020年2月に登録生産者団体からの要望により消除されています。
▼参照記事:「西尾の抹茶」が地理的表示(GI)保護の登録取り下げ?!GIの問題点とは?

よって、現在(2020/6/15)日本の茶で地理的表示(GI)登録されているのは「八女伝統本玉露」のみとなります。

地域団体商標とは?

(図)「地域団体商標 特許庁」カラーのロゴ
「地域に根差した団体が地域ブランドの商標を有し、その団体の構成員が使用できるもの。
地域の名称と商品(サービス)に関連性があり、ある程度の認知度が必要」です。

こちらの登録がされているものが以下になります。

【茶】
足柄茶、伊勢茶、宇治玉露、宇治煎茶、宇治茶、宇治碾茶、うれしの茶、掛川茶、かごしま知覧茶、河越抹茶、川根茶、霧島茶、くまもと茶、甲賀のお茶、静岡茶、知覧茶、西尾の抹茶、東山茶、福岡の八女茶、政所茶、美濃白川茶、八女茶

【茶外茶】
甲斐の桑パウダー、甲斐の桑茶

【海外】
CEYLON TEA(せいろん てぃー)

以前記事にしましたが、中国で「宇治」が商標登録されてそれを訴え、現在も訴訟が続いています。

最近、中国の国家知識産権局が「宇治は日本の有名な都市であり、抹茶の産地」と認めたそうです。
▼参照記事:【2019/11/18、2020/6/12追記あり】中国で「宇治」が商標登録?!今後宇治茶と名乗れなくなる?!

地理的表示(GI)と地域団体商標の違いは?

特許庁に分かりやすいPDFがありましたので、そのまま表を添付させていただきます。

GIと地域団体商標
▼引用:地域団体商標と地理的表示(GI)の活用Q&A(2019年6月)

いくつかピックアップすると、

■地理的表示(GI)は「農林水産物、飲食料品店」に限るが、地域団体商標は「すべての商品、サービス」となっている
⇒お茶に関係するものだと「常滑焼」や「九谷焼」等も登録されている

■地理的表示(GI)は品質基準等を公開し国もチェックをするが、地域団体商標は登録団体に品質管理も委ねられている。
⇒地理的表示(GI)の方が厳しい(ように思われる)

■不正使用の場合、地理的表示(GI)は国が介入。
地域団体商標は商標登録団体等が取り締まる

くらいが主な違いでしょうか。

なお、地理的表示(GI)と地域団体商標を二重に登録することも可能です。

しかしながら、地域団体商標は団体によるある意味独占が可能ですが、地理的表示(GI)となると「その地域全体」で使用することが可能なため、独占は難しくなります。

団体のみの利益追求を考えるのであれば、地域団体商標を取って、自衛をしなければならないものと思われます。(国の保護は得られないため)

この辺りは非常に難しい問題ですね…。

輸出等を視野に入れるなら、地理的表示保護(GI)。
近隣地域のみの独占を考えるなら「地域団体商標」。

のように、将来的なビジョンを描きながら登録が必要であると考えられます。
どちらにせよ、周囲と円滑な関係を築かないと難しいところでもあるのかも?

結び

この二種類だけでも農林水産省のHPと特許庁のHPを見比べなければなかなか理解が難しいです。

他にも茶に関わる権利関係はたくさんあります。
種苗法等もまとめたい…。いつか…。

そして、宇治の問題のように地域団体商標を登録していて、国を跨いだ問題に発展してしまうこともあります。

それが地理的表示(GI)だった場合は国同士が介入するような事態に発展するのかも知れませんね。
※宇治の件は「宇治小山園」の問題のため、国を跨いだ企業同士の争いです。

例えば、フルーツの人気品種の苗が盗まれて、海外に盗用されるような例は後を絶ちません。

日本の食が注目されるようになったという意味では喜ばしいことですが、実際の被害を考えると由々しき問題です。

植物の苗も茶の名称も知的財産には変わりありません。

今後より日本茶を海外の方に広めたいのであれば、知的財産を守るということもきちんと考えていかなければいけないのは当然のこと。

今はコロナウイルスのため、海外へ行くことも来ることもままならない状況ですが、終息した際にはまた多くの観光客がやってきて日本の茶に触れてくださると思います。

茶の素晴らしさを伝えるために、理解してもらうために、地域や国がみんなで協力して管理、保護していっていただきたいと切に思います。

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