【追記あり】中国で「宇治」が商標登録?!今後宇治茶と名乗れなくなる?!

波型茶畑 茶のニュース

ここ数日、ニュースで多く取り上げられています。

「宇治」が中国企業に商標登録される恐れがある(中国で「宇治」が使用できない)という衝撃的な内容です。

この問題について少し調べてみました。
宇治茶を愛する筆者には由々しき問題!!!

事の経緯

2010年、京都の老舗茶舗「福寿園」が宇治茶のブランド名を守るため、「宇治」を中国商標局に登録。

2011年の東京電力福島第一原発事故以降、放射性物質の安全性を証明することが難しくなり(日本と中国双方で放射性物質の安全性を示すことが曖昧なため)、宇治茶を中国へ輸出することが出来なくなる。

2017年、中国企業が商標取り消しを請求、今年8月に認可。
※中国商標法の規定では継続して3年以上使われない商標は取り消される。

⇒福寿園は異議申し立ての行政訴訟の手続きを行う

しかし、一方で中国企業が、商標取り消しを見越して「宇治」の商標登録を再申請。
福寿園も再登録を行うも、上記中国企業の方が一日再申請が早かったため、中国企業が「宇治」の登録者になる可能性が高い。
※現在、京都府、京都府茶業協同組合が中国当局へ異議申し立てをし、対応を急いでいる。

実際に調べてみると…

少し前に中国商標局にアクセスを試みたところ、2019/9/4に「宇治」が某中国企業に登録されていることが確認できました。(2019/9/4は若干うろ覚えですが…)

ただ、その後(10/3)再度閲覧を試みると、アクセスできない状況になってしまいました。

一度閲覧が出来た際に登録者になっていた会社には「宇治○○有限公司」と「宇治」の文字が登録されており、「宇治」で検索して出てきた他の商標には「宇治抹茶」等、宇治にまつわる言葉が多数登録されていました。
「小山園」というのもあったような…。社名では…?

中国商標

中国商標検索

ちなみに、対象の有限公司を検索すると、残念ながらやはり検索が出来ませんでした…。(しばらくグルグルするのが数回続きました)
また後日試してみたいと思います。

また、対象の企業名は伏せておきます。

今後どうなっていくのか考えてみる

調べてみると、似たような事例が最近ありました。

同じく中国の商標局で「岡山」を登録していた中国個人の登録が無効になったというものです。

岡山県と岡山県商工会議所連合会の連盟で無効請求を行っていましたが、「岡山」は「公知の外国地名」ということで登録無効が認められたとのこと。

ちなみに、こちらは検索が出来ました。

中国商標岡山
ちなみに、この下にも続いているのですが「岡山」まだありました…。

今回「岡山」って中国でも似たような地名があるでしょうから、日本のことを知らない方だったとしたら散々でしょうね…。

余談ですが、以前商標登録を考えている方に話を伺ったところ、同じものがないか片っ端から調べなければいけないとのことでした。

中国の方もまさか海外(日本)の県からクレームが来るとは思っていなかったでしょうし、商標登録について考えている方は、きちんと専門家に相談した方が良いと思います。

さて、話を戻しますと。

前例から考えると「宇治」も当然「公知の外国地名」ですし、申請取り下げの可能性は考えられます。

しかし、「岡山」の件は個人の方が登録申請したもの。
「宇治」については企業が相手です。

「岡山」の例ですと2017年6月に個人が商標登録、2018年10月に岡山県側で無効請求を行い、2019年9月30日に岡山県側で無効になったことを公表しています。

個人相手だとしても、1年近く無効になるまでかかっていますね…。

企業相手(企業の規模等にもよると思いますが)だともっとかかってしまうのでは…?

万が一中国企業の商標登録が通ってしまったら…?

一番心配なのは、宇治で作られていない茶を「宇治茶」として販売される可能性があるということでしょうか。

どこで作られたかわからないお茶が「宇治茶」として販売され、特に宇治の特産である玉露や抹茶のブランドイメージが失墜する可能性があります。

もちろん、あくまでも可能性です。

「岡山」に関しては10件以上の「岡山」の登録があるようですが、現状問題になったことはないとのこと。
前例の個人の方も<給湯と水浄化設備>の商標だったそうですし…。ちょっと可哀そうなくらい…。

「宇治」については、利益が相当絡んできますし、宇治側としては長年の信用も中国でのビジネスチャンスも失う可能性が高い訳です。

また、宇治茶だけではなく観光にも大きな打撃があると考えられます。

各国で国の文化や景観を守ろうと整備が進められていますが、今回のようなことが今後も継続して起こってくると考えられます。

日本の茶も海外への展開を今後より進めていくにあたって、より充実した保護制度が必要でしょう。

【関連記事】
▼参照記事:旅の思い出2019年5月-京都府茶業研究所①(玉露の本ず栽培)-
▼参照記事:「宇治茶の普及とおもてなしの心の醸成に関する条例」、「府『宇治茶』新条例」(仮称)とは?
▼参照記事:南九州市知覧の茶商が初めてのFSSC22000取得。日本茶はますます海外へ。
▼参照記事:東京オリンピック・パラリンピックに向けた茶の取り組み。GAPについて。
▼参照記事:インド、アッサムティの地理的表示(GI)保護制度
▼参照記事:ユネスコ無形文化遺産に日本茶を!大切な日本の文化を守ろう。

結び

新芽茶畑
モッチーさんによる写真ACからの写真

常識的に考えると、「宇治」がこのまま簡単に中国企業の商標登録とはならないと思っています。

宇治が日本にとってどれほどの歴史と文化を持った場所で、宇治茶がどれほど日本の茶業に影響を及ぼす存在であるかを考えれば、万が一、中国企業の商標となった場合は国同士の問題にも発展しかねないのではないかと筆者は考えています。

ただ、このようなことが起こり得ますから、世界的な共通の保護制度の整備が求められ、積極的に登録をしていくべきだと考えています。

登録は非常に大変であると聞いていますが、そこは国が国の財産を守ると考えてもっと力を貸してほしいと願うばかりです。

※この辺りの知識が乏しいので、誤りがあったら是非お教えください。今後も勉強をしていきたいと思っています。

【追記 2019/11/18】
京都新聞で中国の宇治茶のコピーにより2億円の被害が出ているという記事がありました。

記事の下に記載がありましたが、筆者も「国をあげて対応していかないといけない問題」だと思います…。

【追記 2020/6/12】
日本食糧新聞で、「丸久小山園、「宇治小山園」商標権係争 中国企業へ違反裁定」という記事が6/10にアップされています。

中国浙江省の企業が「宇治小山園」の商標で抹茶を販売していた商標権係争の件で、中国の国家知識産権局が同商標を無効として裁定書を発行、丸久小山園がこちらを受理したというニュースです。

少しずつ良い方向に動いているのを感じます。
京都府の新聞でも宇治商標絡みの記事が載っていたようですので、今後も目が離せません。

【2021/3追記】
先日中国産の茶に「京都宇治」とつけることを中国当局が無効と認めたというニュースが流れました。

今後中国では「宇治」や「京都」とつけた商品を登録しづらい状況になるだろうとされています。
(とはいえ、まだまだ今後も戦い続けなければいけないような気もしますが…)

コメント

タイトルとURLをコピーしました