日日是好日-日々をただ受け入れて楽しむこと-




日日是好日」が2018年10月6日、7日、8日と先行上映されました。
時間が取れたので早速劇場に足を運んできました。

2002年に出版された「日日是好日 お茶が教えてくれた15のしあわせ」が満を持して映像化。
森下典子氏の自伝エッセイです。
私(通常は筆者と書きますが紛らわしいので私と表記します)はこの小説の大ファンで、今も時折読み返します。

 

黒木華演じる「典子」がふとしたきっかけから武田先生(樹木希林)の元に茶道を習い始めることから話が始まります。
就職を控えた20歳の典子と従姉妹の美智子(多部未華子)。
袱紗の畳み方から始まる茶道を「変なお茶」と感じつつも、つかず離れず茶道を続けていくことから「茶の真髄」を感じるまでの物語。
就職、恋愛、失恋、結婚、親の死…25年の間にともにあったのは『茶』でした。

このエッセイは一人の女性の精神的な成長の物語です。
ただ「茶道」について語るものでもなく、「茶道」とは…という訓示を垂れるものでもありません。
綺麗ごとだけの話でもなく、中には重い話題もあります。
しかし、典子が壁にぶつかり、惑い、進んでいく様は読んだすべての人が共感できることばかりで、気づくと本の中に引き込まれています。

私自身が『茶』に興味を持ち始めて10年ほど経った頃。
初めて誰もいない茶室に座った“あの日”を思い出します。
真新しい畳の香りとただただ耳から入る自然の音。
薄暗くて、仄かな日の光が差し込む3畳ほどの空間。
知らぬ間に目を閉じて五感だけに神経を集中しました。

つくばいから少量ずつ流れていく水の音。
何かを知らせるような鹿威しの音。
甲高い鳥の声に交じった、ホトトギスの鳴き声。

ふと、「音に耳を研ぎ澄ませている自分」を「遠くから見ているもうひとりの自分」がいました。
まさに「客観」です。

静寂…

恐らくその時間は数分だったでしょう。
茶を用意する方の衣擦れの音ではっと我に返りました。
『音』だけに集中していたその短い時間に、胸に抱いていたネガティブな感情や日々のモヤモヤが消え失せていました。

あの日から私自身も茶道に魅了されたのでした。
それまで全く興味もなかった茶道の精神世界を感じた瞬間に、茶のとてつもない奥深さを感じ、千利休の本を読み漁りました。
禅の世界観にも興味を持ちました。

本を読み漁っている中でこの本と出会ったのです。

 

典子の精神の成長を読みながら、私も目の前が開かれるような気持ちでした。
生きるとはこういうことだったんだ、と。
気づくととめどなく涙がこぼれていました。
今も気持ちが落ち込んだ時にはこの本を手に取ります。

それほど大好きな本の映像化。
実は私のイメージしていた武田先生は樹木希林さんではありませんでした。
実写化する時にいつも感じる違和感。
少しだけ不安がよぎりました。

ですが、見てみると杞憂だということに気づきます。
本で想像していた『音』が見事に映像でも表現されていました。
典子は思った通りに悩み、傷つき、そして笑います。
終わりには自然と涙が流れていました。

個人的には映画を見た後に、改めて本を読んでいただきたいと思います。

私自身も振り返ると長く茶に携わってきました。
まだまだ未熟ですので、日々精進です。
典子と同じように泥臭く、でも、精一杯生きています。

ふと『わかった!』と思う日があり、『なぜこんなにもダメなのだ』と落ち込む日があり。
雨の日は雨を楽しむように、雪の日には雪を、暑い日には夏の暑さを楽しむ。
ただそこにいるだけでいい。

日日是好日

そんな日々を生きていきたいと強く感じた一日でした。
お茶好きな方だけではなく、人生に迷いを感じている人にも是非。

※映画は2018年10月13日より全国映画館で公開となります。

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