筆者おススメの本④ー茶道教養講座14 日本茶の歴史ー

抹茶と干菓子

冷房をいれなくても快適に過ごせる日も出てきて、外出するとくしゃみが出るようになりましたので紛れもなく季節は秋。

通勤電車の中や自宅に帰って、本を読むことが多くなってきました。

本棚を片付けながら、これどんな本だったかな、これ細かいところ忘れちゃったな、という本を読んでいくようにしています。
とはいえ、筆者ものすごく本を読む速度が遅いです。。

こちらはかなり久しぶりに開いた本です。

今回の本は?



著書、橋本素子先生の出版時(平成28年7月)のプロフィール

梅花女子大学非常勤講師。
1965年生まれ。
奈良女子大学大学院文学研究科終了。
専門は中世日本史。主に喫茶文化史。
京都府茶業会議所学識経験理事。
共著書に「講座 日本茶の湯全史 第一巻中世(思文閣出版)」

長い日本茶の歴史をご自身の見解とともに分かりやすく解説されています。

歴史、特に中世あたりが非常に苦手な筆者からすると、思った以上に分かりやすくするすると読めました。
某資格を取る際もこの辺りは試験に出ないことを前提に覚えなかったという痛い記憶が…。

筆者おススメポイント

筆者のおススメポイントが結構あったのですが、2つに絞ってみたいと思います。

①喫茶文化の到来

日本の喫茶文化はやはり中国から入ってくるのですが、橋本先生はこの喫茶文化の到来を大きく分けて3回あったと書かれています。

1、煎茶法
2、点茶法
3、淹茶法

一度目は平安時代前期(800年代はじめ)、唐風の喫茶文化の「茶を煮出して飲む方法」が到来。
煎茶法 (せんちゃほう)
※煎じるの「煎」ですが、この時代の煎は煮出すの意

二度目は鎌倉時代初期(1100年代の末期)、宋から「抹茶(粉末茶)を湯に注ぐ飲み方」。
点茶法(てんちゃほう)

三度目は江戸時代前期(1600年代の後半)、明から「葉茶を湯に浸して飲む飲み方」
淹茶法(えんちゃほう)

これはただ単純に覚えやすい、と思いました。

資格を取る際に、長い歴史をはじめから順に追いながら覚えていたので、点と点がつながっていませんでした。

喫茶文化に限って見ると大きく3回の変革期があったことを頭に入れると、そこに絡めて茶文化を覚えていきやすいと感じます。

②宇治茶は日本一

宇治茶が日本を代表するトップブランドであることは今も変わりはありません。

橋本先生は伝統を重んじる「エルメス」タイプと革新性を重んじる「シャネル」タイプがあるとすれば、宇治茶は常に革新していく「シャネル」タイプだとしています。
 その例え方がまず素敵です。←個人的意見

茶の生産についての資料が多く出てくるのは南北朝時代(1336~1392年)で主に「異制庭訓往来(いせいていきんおうらい)」に詳しいそうです。

※「異制庭訓往来(いせいていきんおうらい)」
⇒『新撰之消息』『百舌鳥往来』『森月往来』などともいう。南北朝時代の初学者向け教科書。1巻。江戸時代,虎関師錬の編とされたが,定かでない。正月から 12月までの行事風物を述べた贈答手紙を掲げ,貴族社会における知識百般を体得できるように工夫されている。中世往来物の一つ。『群書類従』所収。(コトバンクより)

「異制庭訓往来(いせいていきんおうらい)」には初めて日本茶産地ランキングが掲載されていて、第一位は「栂ノ尾高山寺」でした。

それが次第に宇治の評価が上がっていき、栂尾と宇治がトップに。

戦国時代には宇治茶の知名度を上げるために「無上(むじょう)」と「別儀(べちぎ)」というブランドを作ります。

どんどん茶園を広げ、生産量を増やし、経営基盤の安定と強化を図っていきます。

それだけ人気のブランドとなれば、偽物が横行するようになるのは世の常…。

偽物を作らせないように宇治茶ブランドをさらに強固なものにすべく、時の為政者である豊臣秀吉に法令を出してもらいます。

天正12年(1584年)の一条目には
「他郷の者、宇治茶と号し、宇治茶に似た銘袋を似せ、諸国に至り商売せしむ事」とあります。

「以上のことより、近世初頭の宇治茶は、宇治郷内だけではなく宇治郷以外の場所で栽培された茶も、いったん宇治郷に在住する宇治茶師のもとに集積され、製茶やブレンドなどの仕上げの工程を経たのち、全国販売される段には、すべてが「宇治茶」と称された。この時点で宇治茶は、産地名表示ではなく、集散地名表示となっていたのである。」(原文ママ)

そうなってきますと、宇治以外の名の知られぬ産地で作った茶を宇治に持っていって、宇治茶師によって最終仕上げしてもらい高く売るというようなことが当然起こったことでしょう。

それくらい、宇治茶のブランド力が高かったということですね。

内容は違いますが、地理的表示保護(GI)や地域団体商標にも通じるところがありますね。
▼参照記事:地理的表示(GI)と地域団体商標。茶に絡む商標にも様々なものがある?!

それほどに名前が知れ渡っているというのに、まだ宇治茶は革新を続けます。
貪欲。。

ここで登場したのが、覆下茶園からの碾茶栽培。

そして「抹茶と言えば宇治」という今でも続く確固たるブランドを築いていくのです。
▼参照記事:【2019/11/18、2020/6/12追記あり】中国で「宇治」が商標登録?!今後宇治茶と名乗れなくなる?!
▼参照記事:「宇治茶の普及とおもてなしの心の醸成に関する条例」、「府『宇治茶』新条例」(仮称)とは?

この他は是非是非読んでみてください。

難しい言葉も多少は出てきますが、非常に読みやすく分かりやすいです。

結び

世界の歴史も覚えるのが大変なのですが、日本だけでも茶に絞ると相当に覚えることがあります。

筆者は年号を覚えるのが非常に苦手で、茶の教室がある時はずっと壁に向かってブツブツ呟きながら年号を覚えています。(一夜漬け)

こうして、一見難しそうに見えてもさらりと読み流せる日本茶の歴史の本は貴重だと思いますので、是非ご興味ある方は読んでみてください。

橋本先生の著書はほかにも、


こちらがあるそうです。

筆者もこちらは読んだことがないので、早速ポチっとしてみようと思います。

読書の秋、お茶への知識を深めるにも良い時期ですね。

もちろんとっておきのお茶をおともに。

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