【続】ケニアの茶産業について‐茶法改定とTea Board of Kenya (TBK)とTea Research Foundation (TRF)の再設立‐

スリランカ茶畑 茶のニュース

(アイキャッチ画像はスリランカの茶畑です。ご了承ください。)

いつものごとくお茶のニュースを見ていたところ、ケニアの茶の記事がありました。

以前ケニアの茶産業についてちらりと書いた記事があるのですが随分と情勢が変わっていたようで、改めて筆者自身の備忘録を兼ねて調べてみたことをまとめたいと思います。
▼参照記事:ケニアの茶産業

ケニアという産地については上記の記事に簡単にまとめてありますのでご覧ください。

記事の概要

先日みつけた記事を読んでいると「ティーボード再設立」とありまして、「再設立???」となりました。
▼元記事:Kenya Reestablishes Tea Board

以前ケニア茶の生産などについて記事を書こうと調べていた時にティーボードのHPを見ており、ティーボードが無くなっているということに気づいていなかったのです。。
▼参照記事:ケニアの茶産業について

ティーボードの再設立に関して、記事は以下のように書いています。

■ケニア政府は茶業の抜本的な改革を目指して茶法(珈琲法も)を12/1に承認

■合わせてTea Board of Kenya (TBK)とTea Research Foundation (TRF)が再設立される

■茶法(珈琲法も)は茶を販売した直後に農家に支払いをしなければならないという法律(DSS)

■茶のブローカー、バイヤー、モンバサのオークションは購入後14日以内に売上の送金をしなければならず、茶工場は売上の50%を茶農家に支払うというもの

おまけにTea Board of Kenya (TBK)とTea Research Foundation (TRF)は2014年に解散になっているという…。
勉強不足でした…。

現在、Tea Development Agency (KTDA)は民間でありながら大きな力を持っており、それに対抗する措置としてEast African Tea Trade Association(EATTA)の協力なバックアップで茶法を改定したように記事からは読み取れます。

Tea Development Agency (KTDA)は小規模茶農家が所有する民間持ち株会社で、およそ70万人の小規模茶農家と70ほどの製茶工場を経営しておりケニア茶の60%を担っています。

East African Tea Trade Association(EATTA)は茶の生産者、仲買人、バイヤー、梱包業者を結集する団体で、「モンバサオークション」はこの協会の後援で開催されます。

国内で生産を担う団体vs茶商というような構図でしょうか…。

茶法改定、Tea Board of Kenya (TBK)とTea Research Foundation (TRF)の再設立から何が見える?

記事の中には、「The nation’s 700,000 tea farmers generally support reforms to right perceived wrongs they say are perpetuated by KTDA.」とあり、Tea Development Agency (KTDA)に対する不信感が茶法改定を生み出したように書かれています。

Tea Development Agency (KTDA)がどういったことを行っているのか調べてみると、こういった資料がありました。

特に紅茶では、ケニア茶開発機関(Kenya TeaDevelopment Authority – KTDA)が直接 NPK 肥料を安く輸入し、農家に提供、代金を収穫後の生産物から回収するシステムがあり、肥料の使用量が多くなっている(例えば 2014/2015 年は KTDA が 7 万トンをロシア等から直輸入)。
コーヒーや園芸作物では、農家が自由に販売先を選択することから、そういったシステムはないが、換金作物であるため、肥料使用のインセンティブがある。
しかし小規模に穀物栽培を行う農家の場合は、作付け時期に手元資金が不足し、肥料使用を削減し、結果として収穫が減少するという悪循環がしばしばみられる。

アフリカにおける二国間事業展開支援事業-ケニア-

Tea Development Agency (KTDA)は安い肥料を輸入し、それを農家に提供、代金は生産物を収穫後に回収しているとあります。

KTDAは民間企業ですから価格の安い肥料を小規模茶農家にたくさん渡し、肥料代と称して収穫した茶を搾取してしまうという構図は安易に想像できます。
もしかして肥料過多になる可能性もあるのでは…?

小規模茶農家としては権力のある企業に逆らって茶が売れなくなるのは非常に困る訳ですから、従わざるを得ません。
(これらはあくまであり得る、という話でありもう少し調べる必要がありますが…)

また、最初の記事の中では茶農家が消費者に対して直接販売することが許されないとあります。

このままの状態を続けてしまえば、小規模茶農家は資金繰りができずに苦しいばかりで暴動などが起こらないとも限りません。

そのため、茶法を改定し小規模茶農家にも見える販売ルートや生活の保障を確立していくためにTea Board of Kenya (TBK)とTea Research Foundation (TRF)の再設立が行われるものと考えられます。

結び

農業のイラスト
法の改定とTea Board of Kenya (TBK)とTea Research Foundation (TRF)の再設立によって何が起こるのか、というのは筆者にはまだわかりませんが、今後例えばスリランカやインドのティーボードで行っているような地理的表示保護制度を推進していったり、付加価値商品の開発が行われていったりするのではないかと思います。
▼参照記事:インド、アッサムティの地理的表示(GI)保護制度

肥料を安く購入し、農民にそれを売りつけ、代金と称して作物を奪い取る。

ということは世界各国どこでも行われているものだと悲しい気持ちになります。

もちろんそれは日本の茶業界でも。
筆者も耳にしたことのある話です。

しかしながら、茶業の難しさも同時に痛感します。

筆者自身が生葉を売りに行っている小規模茶農家な訳でして、茶価が下がれば売上も落ちます。
おまけに土地も借りています。
▼参照記事:兼業茶農家とは?実際兼業茶農家ってどういう感じで茶と関わっているの?

製茶工場に生葉を持っていくだけで、その後どうお茶が作られてどんな人が口にするのかもわからないのです。

市場に左右されず、最初から最後まで茶を作って販売したい!と思ったならば、小規模でも製茶工場を作らなければいけません。
それには当然多くの資金が伴います。

美味しい(目を引くような)お茶を作らなければ売れない。
顧客をつけるのに大変な苦労が必要。

小規模茶農家の悲哀はここにあります。

日本でも茶業の新規就農はいまだ非常に厳しい状況です。
⇒これは良い悪いではなく何代も続く茶農家だけが生き残るような構図ができているように思います。

では、どうしたらいいのでしょうか?

答えが分かれば、茶業がこんなにも衰退するはずはなかったでしょう。

世界中の茶産地で生産者が離れていっていると聞きます。
どこも抜本的な改革が必要なことは誰が見ても明らかです。

ケニアの話からずいぶんと離れてしまいましたが、筆者のような一個人に出来るのは「茶の素晴らしさ」を一人でも多くの人に伝え、茶を飲んで、知って、購入してもらうこと。

悲しいかな、それしか出来ません。

最初は安いものでも良いでしょう。
そこから、生産者の見えるような茶を購入してもらえるようになれば…と思います。

生産者の見える化には、こういったものが活用されるようになれば良いのでしょうね。
▼参照記事:茶の情報をネットで確認できる時代に?インド紅茶局のトレーサビリティ(茶情報追跡)に関する試み

今後もケニアの茶産業を追っていきたいと思います。

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